『梟の城』 司馬遼太郎

反権力的主人公


梟の城 (新潮文庫)
梟の城 (新潮文庫)
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司馬 遼太郎
新潮社
売り上げランキング: 102,355


織田信長によって一族を殺された伊賀忍者、葛籠重蔵は、怨念を心に秘めつつも仏像を彫り山にこもっていた。そこへ忍の師匠である下柘植次郎座衛門が訪ねてきた。同門の忍者である風間五平が行方知れずとなったので、彼が請け負っていた仕事を継げというのだ。それは堺の豪商・今井宗久から下された秀吉暗殺なのであった

初期の司馬遼太郎の代表作で、戦後の忍者小説のはしりともいわれる金字塔的作品である
伊賀忍者が秀吉の代になって影響力が下がった今井宗久の頼みで秀吉暗殺を謀るのだが、そこに至るまでがかなり複雑。さる大名に仕える女忍者・小萩にたぶらかされたと思えば、同門である風間五平が敵役として後を追われ、師匠の娘である‟木さる”が重蔵と五平の間を揺れ動く。そこへ、甲賀忍者のレジェンドが加わるとか、あまりに因縁が絡み過ぎて秀吉暗殺どころの状況ではない(苦笑)
いわば、ハードボイルドに生きる忍者同士の駆け引きが本編であり、重蔵と小萩と木さる、そして五平との四角関係に代表される、非情と人情の間に揺れ動く心理描写に魅せられる

たしか市川崑の映画では、眠っていた秀吉に重蔵がなぜ朝鮮出兵を続けるのか、問いただす場面があったはず。それに秀吉は「今となっては皆に火がついてしまっていて、わしを殺したところで止められるものではない」とうそぶいていた
これを聞いたときは、太平洋戦争時の日本国民を連想したのかと思ったが、小説を読み直してみると、そうした場面はない!
重蔵はあくまで忍者としての至芸に生きる人間であり、それを実現するために秀吉の暗殺を仕掛ける。俗世の帝王として諸事に気を配る秀吉とは、真逆の存在である
映画のように政治的メッセージがなく、男と男の決着として収めてきってしまうのは、後の司馬小説のイメージからは想像しがたい。こういう徹底したクールさが、忍者小説時代の魅力なのだ
巻末にある作家・村松剛の解説には、時代小説のなかでの本作の位置付けががっつり説かれているので、読み逃しなく
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『スノーデン・ファイル』 ルーク・ハーディング

携帯やネットは筒抜けなので、暴露する側も徹底した情報統制


スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実
ルーク・ハーディング Luke Harding
日経BP社
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2012年末、エドワード・スノーデンは何を世界に警告したのか。スノーデンとそれに協力するマスメディア、そして米英両国との確執を描く
エドワード・スノーデンはCIA、NSA(アメリカ国家安全保障局)の職員であり、学生時代から磨いたスキルを活かしてコンピュータセキュリティに関わっていたが、NSAが自国民の無制限の通信傍受に携わっていたことから、合衆国憲法に抵触するとして告発に及んだ
本書ではNSAイギリスのGCHQ(政府通信本部)が行った諜報活動とともに、スノーデンがどうやってグレン・グリーンウォールドなどのジャーナリストと接触したか、スノーデンから得た情報を記事にしたイギリスのガーディアン誌にどのような圧力がかかったかも取り上げられる
ネットを通して世界を監視社会化した国家と、それに対抗するジャーナリズムの戦いの日記なのだ

ずいぶん報道されたことながら、おさらいすると、事の発端は2001年の同時多発テロ事件である
アメリカへのテロを防ぐために、ネット社会への監視が必須とされ、アメリカとイギリス、ヨーロッパ大陸をつなぐ大西洋にまたがる光ファイバーに手を加えられた。これには、イギリスのGCHQも積極的に関与し、情報を共有し合うことになる
さらにIT企業にも通信傍受の協力が求められ、マイクロソフト、Yahoo!、Google、Facebook、You Tube、Skype、アップルらが応じて、NSAが傍受しやすいように暗号回避のバックドアが作られることもあった
対テロ戦争の美名のもとに、リベラルとされるオバマ政権でも継続され、改善を期待していたスノーデンを落胆させることとなる。そして、通信傍受の対象がテロと関係ない一般市民や第三国の人間も無制限に広がっていき、機関自身すら捌ききれないほどの情報がNSAに集積されていくこととなる。ITのテクノロジーと情報機関が融合することで、システムの暴走が起こっていたのだ

スノーデンの告発はアメリカの国民や同盟国を震撼させた
EUのリーダーであるドイツは厳重に抗議しつつも、自身の諜報活動から深く追求しなかったが、2013年にはメルケル首相の携帯が盗聴されたことが発覚して、米独の関係は一気に冷え込んでしまう
旧大英帝国のつながりから特別な情報共有が進んでいるカナダ、オーストリア、ニュージーランドにすら、NSAの活動は及んでいて、アメリカの影響力が強い中南米諸国にも強い動揺が広がり、アメリカ―イギリスを経由しない光ファイバー網の建設も検討されたという
しかし、そういう実態が明かされたところで、米英政府は強気だった。ドイツやフランスも自国の諜報活動に支障が出ることから強くは追求せず、イギリスは記事を書き続けるガーディアン誌に対して露骨な圧力をかけ、裁判にまで発展する。イギリスには、合衆国憲法修正第一条のように報道の自由が明文化されておらず、国民の安全を口実に封殺されやすいのだ
そこでガーディアン誌は憲法で報道の自由が保障された、通信傍受の大元であるアメリカの支部で報道が続けられた。そして、母国アメリカにいると終身刑にあいかねないスノーデンは、監視社会が全体化しているロシアに亡命せざる得なかった
自由と権利を守るために、守られない国にいざる得ないという状況は皮肉であり、自由に見えるネット社会の実態を示す深刻な話なのである
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『HUNTER×HUNTER』 第35巻 富樫義博

ラオウ的な第一王子が有利過ぎる気が


HUNTER×HUNTER 35 (ジャンプコミックス)
冨樫 義博
集英社 (2018-02-02)
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第35巻。引き続き暗黒大陸へ向かう航路のなかでの、次期カキン国王を巡る継承戦である
王子のなかでの最年少、第14王子ワブルの警護を預かったクラピカだが、出航まもなく警備隊のほとんどを失い、しかもその生き残りは得体の知れない念獣に操られていた
クラピカはその護衛の能力を自身の念によって奪い、王子の母オイトに植え付ける。その能力は狙った小動物を完全に操作して、知覚を共有するものだった

14人いる王子が次期国王を賭けたバトルロワイヤルが始まった。それぞれの王子には儀式により念獣がとりついており、簡単には殺せないがその中身を知ろうと苛烈な情報戦が展開される
と、筋を書いているだけでだいぶ理屈っぽくなってしまうように、本巻もかなり説明的な台詞が多い(苦笑)。クラピカがどういう情報戦を仕掛けたかと同時に、相手がそれをどう捉えたかなどを、しっかり描写してしまうから見ごたえというより、読み応えのある作品になってしまっている
読者が消化できる情報量をとうにオーバーしている気がするのだが、こういう設定の整合性をとっていく労力が遅筆の一因に違いない
それでも主役はもちろん、侍女シマネといった味のある脇役まで魅力的で、話が飲み込めなくてもページをどんどんめくってしまうのだが


前巻 『HUNTER×HUNTER』 第32巻・第33巻・第34巻
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地震の被害

ハマーン様、申し訳ありません

0618 地震で

京都の山科に住んでいるのだが、職場のトイレで激しい揺れにあって、実家に電話すると二階は物が落ちたりもしたらしい
本棚や積読の山がどうなっているのか、心配しながら帰ったものの、被害はガンプラ一機だけで済んだ

枚方や高槻は京都に近い。職場の人の家族や知り合いが住んでいて、連絡を取るのも大変そうだった
いたましい事故も起きて、水道、ガス、電気が広範囲で止まったりと、まだまだ終息しない状況で、早い復旧を願うばかり
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