『叛旗 小説李自成』 上巻 姚雪垠

司馬遼太郎の序文あり


叛旗 小説李自成〈上〉 (徳間文庫)叛旗 小説李自成〈上〉 (徳間文庫)
(1992/09)
姚 雪垠

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明朝末、最後の皇帝となる崇禎帝は、内に流賊の反乱、外に満州の侵攻を受けて追い詰められていた。外敵と講和して先に内乱を収めるべきだとする和平派に傾くが、硬骨漢の盧象昇に説諭を受けて盧の作戦を承認する
一方、明朝を見限って反乱を起こした李自成は、他の流賊の投降で孤立したが、潼関の戦いで名将・洪承躊の包囲をなんとか突破し落ちのびた。味方は数百に減り、妻子と離れ離れに成りつつも、身をやつして再起を誓うのだった

中国では、三国志以来とも言われる長編歴史小説
舞台は17世紀、明清交替間近、日本でいうと江戸幕府が鎖国体制を固めつつある頃で、明朝を滅ぼした流賊・李自成を主人公としている
共産党政権下で書かれた小説であり、李自成はマルクス史観から農民のために戦った英雄に分類されているようだ。ただし小説そのものは、ほんの二言ぐらいしかイデオロギーを感じさせる言葉もなく、いわゆるプロレタリア小説ではない
李自成ら将帥に若干の理想化はあるものの、かなり抑制が効いていて神仙の類は関わらないし、題材は英雄なのに写実的な描写が貫かれている。当時の衣装や風俗、人間関係を目の前にあるかの如く、現出させる文章力は脱帽である
巻末には専門用語ひとつひとつに脚注が用意され、当時の紫禁城の地図など資料性も非常に高い
上巻のみで京極夏彦ばりの太さを誇り、今流ではやや展開が遅いかもしれないが、流賊を生きざるえなかった様々な人々の生き様を見ることができる

*冷静に比べると、京極夏彦の二分の一ぐらいでした

李自成本人に理想化はあるものの、その軍、流賊のあり方は見も蓋もないほど忠実に描かれている
李自成は駅站制度の廃止にともなって反乱を起こした馬丁だが、それに付き従うものは役人の汚職、自然災害から暮らせなくなった農民たち
彼らが土地を離れて流賊となれば、それを養う食糧をどこからか、調達しなくてはならない
第一に上げられる方法も商人から軍資金で購入、第二は地方の富豪に対し強訴、第三には富豪や官舎を襲って略奪、と作中には三段階が掲げられている
まるで幕末の不逞浪士のようだが、富豪の側も略奪を免れるため自警団“郷勇”を組み、砦を作る。富豪たちの住居群(村?)に“塞”の文字が当てはめられているの象徴的だ
大きい流賊に対しては富豪たちも到底かなわないので、用心棒代として物資を提供する
まるで災難のようだが、貧しい農民からすると戦利品をたまに配ってくれる流賊のほうが、奪うだけの官兵のほうがマシで、流賊は国家の代わりに富の再分配をしているともいえる
そして大流賊の影響力が国土全体を及べば、新しい王朝となるのだ


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