『ラノベのなかの現代日本 ポップ/ぼっち/ノスタルジア』 波戸岡景太

ライトな評論


ラノベのなかの現代日本 ポップ/ぼっち/ノスタルジア (講談社現代新書)ラノベのなかの現代日本 ポップ/ぼっち/ノスタルジア (講談社現代新書)
(2013/06/18)
波戸岡 景太

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「かつてのオタク、いまはフツー」。ラノベを通して読み解く現代日本の変容
本書はライトノベルの世界を知らない世代、人向けに書かれたもので、W村上などのポップ文学の系譜を引きつつ、現代の文学としてのラノベを位置づけて、そこから日本の変化を辿っている
いわばライトノベルを読む世代と読まない世代の「断絶」を埋める役割を担おうとしているのだが、残念ながらそれは果たされていない
著者は管理人と同年代ながら、若いころに青少年向けの小説に触れなかったので、東浩紀などの評論やライトノベルの文章からの引用で語ろうとする。評者とライトノベルの間の「断絶」が埋められていないのだ
結果、著者が把握しているW村上から、文学的な役割を果たしているようなライトノベルを選んで、影響なり社会評論を語るという薄いラインを突いてしまい、世代論にとどまるところも物足りない

ただライトノベルの一部の作品が、文学的な役割を担っていることは再確認させられた
本書では滝本竜彦の『ネガティヴハッピー・チェーンソーエッジ』から、『涼宮ハルヒの憂鬱』などを引いて、主人公の内面とヒロインたちとの関係に注目していく
それぞれ変わったヒロインに振り回される主人公という点は共通するものの、比較的能動的に動くタイプから、ヒロインから積極的に迫られても寸止めに終わって友達にとどまって「ぼっち」を維持するタイプに移行しているという
著者はそうした主人公とヒロインから、W村上の課題を引き継いだ冷戦以後の価値観が見て新世代のある種の達観を感じている
作家の小説に対する考え方に注目していることもユニークで、村上春樹が「雪かき」=労働に喩えたのに対し、ライトノベルの書き手たち、例えば西尾維新は「あくまで趣味」であることを強調する
W村上が小説を商業活動=「労働」と位置づけて、ポップ文化の担い手として働き者の「大衆」に接近したが、ライトノベルの書き手は「労働」から離れた「趣味」である姿勢で読者に向かっているという指摘は鋭い
小説は道楽であり、小説家は余計者であるという、ある種の原点回帰であろうか

本書はW村上とライトノベルを接着する構想にこだわり過ぎて、しんどい内容になっている
ライトノベルの作家たちをW村上の読書体験があると仮定してしまって、小説とライトノベルの「断絶」を把握していないからだ
ライトノベルは初期には「ジュブナイル」、青少年を大人の読み物へ導くステップとしての小説と混在していたものの、まずもって漫画の影響が強い
漫画があまりに成熟したために、小説形式のほうが読者の敷居が低いという転倒が生じ、「漫画のような小説」というコンセプトでライトノベルは成立しているのだ
だから読者も書き手も、伝統的な日本文学、W村上を一般的に経験しているわけでもないし、課題を引き継ぐ意図も自覚的にはない
ライトノベルの文学性を問うとしても、ポップ文学の後継というより、それぞれ違う経路から現代社会の象徴が現れていると考えるべきだろう
本書はライトノベルの評論としては疑問符がつくものの、W村上や寺山修司を絡めた80年代論、ノスタルジイ論は鋭いので、各論は楽しめる


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↑ライトノベルの成り立ちにも詳しい。例によってアクが強いけど(笑)
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