『アヴェンジャー』 フレデリック・フォーサイス

冷戦以後のフォーサイス


アヴェンジャー〈上〉 (角川文庫)アヴェンジャー〈上〉 (角川文庫)
(2008/03/25)
フレデリック フォーサイス

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アヴェンジャー〈下〉 (角川文庫)アヴェンジャー〈下〉 (角川文庫)
(2008/03/25)
フレデリック フォーサイス

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1995年ボスニア。ボランティアで難民支援にあたっていたアメリカ人の青年、リッキー・コレンソが殺された。リッキーの祖父エドモンドは、財界での人脈を生かして、「人狩り」(マンハント)を生業とする男を探し出す。元ベトナム帰還兵で表では弁護士を営むキャル・デクスターは、旧ユーゴで闇社会を仕切り、今は南米で死の商人となった悪党を追うが……

『イコン』以来の、フォーサイス復帰第一作
上巻は“アヴェンジャー”である主人公の半生と、被害者である青年、依頼人である大富豪の祖父の人生を絡ませ、事件の主犯である悪党ゾラン・ジリチの悪行を追跡する。まさに完全な前振りだった
しかし、その前振りで何本の小説を詰め込んだように読ませる。鼻血が出るほど濃い
下巻では『イコン』のように主人公陣営の視点で悪党を追い詰めるかと思われたが、さらに複合的な視点が入った。ジリチを利用したいCIAである
CIAは、ジリチを使ったビン・ラディン暗殺計画を練っていて、アヴェンジャーが邪魔な存在となるのだ
計画の担当者であるデヴローと部下マクブライトは、現地の秘密警察をも抱き込んでアヴェナジャー狩りに乗り出す。そして、ジリチの要塞は自給自足が可能で、100人もの警備員がいる。これをたった一人でどう乗り越えるのか
そして、最後には忘れられていた伏線が炸裂。まさに名匠の逸品である

冷戦時代の作品は主人公の属する陣営が自然と決まっていたりして、欧米人視点から東の全体主義を仮想敵にするものが多かった
しかし、本作は違う。“アヴェンジャー”とCIAの正義は真っ向からぶつかる
“アヴェンジャー”は、アメリカにおいて法の裁きを受けさせることを目的に依頼を受けている。それはFBIの方針にかなっていて、アメリカ国内の法律を外国にも拡張して執行するものだ。いわば、アメリカ的正義を代表している
その一方で、CIAのデヴローは一死多生、小さい悪を利用して大きな悪を倒すのも謀略の世界では容認されると考える。クリントン政権やFBIのようにスキャンダルを恐れる“政治的正しさ”を追求しても、想像を越える発想のテロリストは捕らえられないというのだ
本作はアヴェンジャーの物語として勧善懲悪は成る。その代償として(作品内で直接語られないものの)、ビン・ラディンによる9・11は阻止できなかった
作者のメッセージは明らかで、国連平和維持軍などの“政治的正しさ”を追求しても、虐殺やテロという効果を発揮しないというわけだ。謀略の一人歩きも恐ろしいが、我々はジレンマと戦うべきなのだろう


関連記事 『イコン』 上巻
     『コブラ』 ←デヴローとデクスターが手を組みました
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