【電王戦回顧】第3回電王戦の意義と今後

第3回電王戦は、プロ側の一勝四敗という結果に終わった
前回より順位戦で上位のメンバーを揃え、昨年度までA級だった屋敷九段まで敗れたとあって、人間の完敗といっていいだろう
まして、プロに配慮したレギュレーションでの敗北は、ある種の決着がついたと言わざるえない


1.第3回電王戦のレギュレーション

第3回のレギュレーションから振り返ってみよう

・対戦ソフトと同じバージョンを棋士側に提出する
・用意されたハードウェア一台を使用する。クラスタは組めない(電王戦トーナメントと同じハード)
・持ち時間はチェスクロック方式の五時間。夕食休憩がある
・ロボットアーム「電王手くん」が代指しを努める


一般的にソフトは複数のパソコンでクラスタを組むことで、棋力が向上し読みの傾向も変わる。そして、プロ側は個人でそのような練習環境は用意できない。結果、前回は練習と実戦との違いに振り回されることになった
パソコン一台での勝負は、ソフトの貸し出しと同様にプロの練習環境に配慮したものといえるだろう
逆にいえば、戦前からプロ側がソフトの力を認めているがゆえの条件ともいえる
「電王戦トーナメント」から選出されたソフトに、GPSなど世界コンピュータ将棋選手権の上位ソフトがないなど、PVの「人間側の逆襲」が観られると思われた


2.電王戦の経過

正直言ってどの対局も難しく、管理人には指し手の評価などできようもないので、以下は雑感である

第一局 ●菅井竜也五段 VS 習甦○

電王戦初の振り飛車対居飛車の対抗形。ソフト側が飛車先を突かないまま、矢倉に近い囲いを作る独特の戦型(管理人の持つAI将棋もこういうことをやる)をとったのに対し、菅井五段は6八角と角の転換を図ったがこれが裏目に
一度、優勢になった習甦は、卒なくプロを追い込み、昨年の雪辱を果たした
菅井五段は高い勝率を誇る若手のホープであり、勝った習甦は電王戦MVPに輝いた


第二局 ●佐藤紳哉六段 VS やねうら王○

レギュレーションを巡る騒動に注目が集まる、アヤのつく対局になってしまった
ソフト側がバグを払拭するために直したいと申し入れ、主催者ドワンゴが容認した結果、棋力が上昇したわけだが、ソフトが修正されたのは勝負の一週間前。これを認めてはプロ側の練習環境に配慮するレギュレーションの意味がなくなってしまう
第一局後に流されたPVもドワンゴが興行面で素人であることを露呈したといえよう
対局後の「ソフトが強いというより、僕が弱い」という佐藤六段の言葉は後味が悪い。40局という練習量に疑問の声が上がったが、「局後学習」機能を警戒しすぎたかもしれない


第三局 ○豊島将之七段 VS YSS●

プロ側が連敗で追い込まれ、次世代のオールラウンダーに将棋ファンの希望が託された
戦型は横歩取りで、豊島七段が一瞬の隙に切り込み、ソフトが力を出す前に決着をつけ、ファンの溜飲を下げた
現地中継中に、ソフトが単に飛車をいじめるだけの1四金を打ち、谷川会長を凍らせる場面が有名になったが、あそこまで形勢が開いてしまうと他にまともな手がなかったのだろう
YSSは独自に進化してきた古豪で、全幅検索のbonanza系に対抗し電王戦出場を決めただけでも大したものだと思う


第四局 ●森下卓九段 VS ツツカナ○

ソフトは評価がしやすいことから伝統的に駒得を重視してきた。それが「駒得は裏切らない」で知られる森下九段と対戦することになるのだから、面白い時代になったものだ
森下九段は後手矢倉ながら、果敢に斬り合う変化に突入。なんだか良く分からないうちに、悪くなっていた
立会い人の塚田九段はツツカナの差し回しを「まるで森下九段」と評したように、ソフトらしからぬ筋のいい棋風が光った
対局後の森下九段、一丸さんの態度がすがすがしく、記者会見もお通夜状態にならなかったのがなにより


第5局 ●屋敷伸之九段 VS ponanza○

総合成績の負けが決まっても、Uインターの対抗戦のように大将戦で勝てばいい。去年と同じようにその思いで見守っていた
戦型は横歩取り。屋敷九段の指し手が早く、研究どおりの展開に持ち込んだように思われた
ソフトは珍しく持ち時間を費やし、最終盤にいたるまで屋敷九段のほうが残っていた。最後の最後まで互角の形勢が続き、ソフトの評価は駒得で高いものの、プロの見立てでは形勢不明と見解が分かれた
大駒を追う香打ち、金打ちなど妙な手もあったが、最後は終盤の一手で勝敗が決まったようだ
第四局もそうだが、何が敗着か判然としないハイレベルの攻防だった
局後は屋敷九段の快活な受け答えが、一服の清涼剤のようだった


3.電王戦の今後

さて、前回より実力、段位が上位の棋士が選出したにも関わらず、プロが負けてしまった
パソコン一台勝負でソフトの優越が決まってしまって、電王戦の意義が問われる結果である。今後はどういった形で、人間対コンピュータの対局が想定できるだろうか

(1)タイトルホルダーによる番勝負

棋士はソフトとの真剣勝負の経験が一部を除いて皆無であり、初物の弱さは人間だけが負う。長時間の番勝負なら、ソフトの傾向をつかんで経験を生かすことができる
問題は日程だ。3月から4月開催となると、王将戦、名人戦と重なることになる。前回は三浦八段が名人戦挑戦者になる可能性があり、万全の準備がとれなかったのだ
他のタイトルホルダーも羽生三冠が両タイトル戦の常連(!)となれば厳しい

(2)森下九段による五番勝負!!

 森下九段は対局後と電王戦最後の会見で、「疲れる人間とコンピューターが同じ条件で対局するのはおかしい」「意表の一手も継ぎ盤などで冷静に見れば大丈夫」と大胆な提案をされた
 コンピューターは読みが、棋士は全てを読まなくても分かる大局観と感性が武器とするのなら、そこで純粋に張り合える舞台を用意すべきという考え方は間違っていないと思う
 「この条件なら100戦100勝」「やれと言われれば、いつでもやる」という森下節も炸裂したし、とりあえず森下九段自身が実験的に対局する企画はありなのではないだろうか

(3)対コンピュータ巧者のドリームチーム

 従来どおりの開催なら、羽生世代を無理繰りそろえるより、経験者を集める方がまともに戦えるのではないだろうか。第2回の阿部四段、船江五段、第3回から豊島七段は入れて欲しい
 また出場棋士を決める際に、出場希望者にソフトと対戦してもらって好成績の棋士から選抜するとか
 正直、タイトルホルダーだから対ソフトに抜きん出ているとは言えないので、慣れている人のほうがファンからすると安心感がある


今回の電王戦で、ひとつの区切りはついたと思う
これからは間違いなく、人間がソフトを追いかける時代
ただし、ソフト側も人間の作った定跡、棋譜をデータベースとしている以上、全くかなわないほどの差はつかないと思う
阿部四段が角換りで、豊島七段が横歩取りで快勝したように、豊富な研究で突破できる可能性はある。プロの研究では実戦で使われる以前に決着がついている形もあるそうだから、ソフトに記録されていない研究手順に持ち込めば充分に勝機はある
ただし問題はプロに対ソフト用の練習時間をどれだけ割けられるか、ということ
電王戦経験者は「将棋が強くなった」と話してくれるが、リスクもゼロじゃないだろう
若手あるいは、行動の自由が利くアマチュアから、コンピューターハンターが出てくれないかと管理人は期待している


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