1970年代のカンボジア。米軍によるカンボジア侵攻を取材していたシドニー(=サム・ウォーターストン)は、通訳として現地の記者プラン(=ハイン・S・ニョール)と行動を共にしていた。アメリカが支える政権が崩壊し、クメール・ルージュによってプノンベンが占領されると、住民たちは大混乱に陥りシドニーたちもフランス大使館へ逃れる。しかしカンボジア人の退去が決まり、記者仲間はプランを助けるべく、パスポートを偽造しようとするが……
タイトルの「キリング・フィールド」とは、ポル・ポトによる大量虐殺が行われた土地を差す言葉で、内戦を取材したシドニー・シャンバーグの体験を元にしている
シドニーとプランという二人の記者の視点で物語が組まれており、純粋な被害者の話ではない
特に前半は爆発があるなりカメラを撮りはじめるなど、主人公は良くも悪くもジャーナリストらしい行動が目立つ。プランを助けようと奔走する下りも、内戦そのものより仲間への友情に焦点が向いている
内戦とポル・ポトの虐殺を告発するというより、ジャーナリストの物語であり、実際の悲劇の二、三割しか描かれていないという批判も分からぬでもなかった
ただし、後半のプランの目から見るクメール・ルージュの圧政は、言語を絶する全体主義の惨状が描いているし、シドニーが賞のためにプランを利用したと悩むところは報道記者のジレンマをよく表現している
音楽のセンスには時代を感じてしまったが、観続けられるべき作品だ
リマスター版ではどうなってるか知らないが、DVDでは画面がワイドでなく、フィルムの質をあえて選んだのか、古いビデオカメラを使ったような映像だった
それが70年代の現地報道の雰囲気をうまく醸していて、まるで現実のドキュメントを流用したかのようだ
平穏な生活をぶち壊す突然の爆発は、日常と戦場の境目がない内戦を表していて、死がいたるところに潜んでいる恐怖を感じさせられた
クメール・ルージュに関しては、集団農場での強制労働、少年・少女を使っての監視、知識人階級のあぶり出しと処刑などが淡々と描かれていて、当たり前のように過ぎていく現実が恐ろしい
何気に告発されているのが、ベトナム戦争時代のアメリカによる空爆によって、カンボジアの農業に甚大な影響がでたことで、実はポル・ポト以前に深刻な食糧危機が起きていた
大虐殺への道筋を、アメリカがつけていたことになるのだ
ちなみに、ポル・ポト派は統一されたベトナムに政権を追われ、タイ国境に後退するが、冷戦下では敵の敵は味方と、西側諸国がポル・ポトを支援したというからえげつない
虐殺が国際社会の俎上に乗るのは、90年代に入ってからなのである
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