『反社会学講座』 パオロ・マッツァリーノ

21世紀のイザヤ・ベンダサン?


反社会学講座 (ちくま文庫)反社会学講座 (ちくま文庫)
(2007/07)
パオロ マッツァリーノ

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キレる少年、パラサイトシングル、フリーター、少子化は本当に問題なのか? 自称イタリア人が社会問題の現実を暴露する「反社会学」講座
メディアがコメンテーターを携えてあれやこれやと騒ぎ立てる問題が、実はなんら根拠のないものだったことを軽快に論破していく。全編が似非外国人調なので、いわゆる社会学の用語に振り回されることなく、簡単に要点をつかむことが可能
その分、話の信憑性を疑ってしまうかもしれないが(苦笑)、ジョークはジョークと分かる書き方なので著者の意図を誤解することはないだろう
初出が2004年発刊で、2007年の文庫本には「三年後の補講」としてその間に分かったこと、変化したことをフォローされていた。著者がほぼ内容をいじる必要がなかったというように、問題の本質は十年経った今でも変わらず、メディア側の誤謬も何ら変わることはない
残念ながら、今なお消費期限が切れない本なのだ

のっけから攻撃の対象となるのは、社会学である
著者が言うに社会学とは非科学的な学問であり、他の学問で「こじつけ」と非難されることもまかりとおってしまう
その原因は社会学がカバーする領域が広すぎることにあり、毎年新しい分野が誕生し、名乗りさえ上げれば誰でもすぐ第一人者になれる状況が起きている
そして、領域が広すぎるので誰も社会学の全体を把握できる者がおらず、社会学者同士がお互いをチェックすることは不可能。そのため、お互い研究を肯定する習慣が生まれ、外部からの非難も相手しないという
また、調査結果に対して、研究者の主観を反映しがちなのが他の学問と違うところで、民俗学や文化人類学でタブーな倫理的判断を社会学は犯しやすいらしい
そのため、社会学をかじった者たちは、自らのために社会問題を捏造するマッチポンプを行い、勝手な理想像のためにパラサイトシングル、引きこもりなどの悪者をつくり出す構造が生まれる

その顕著な例が「少子化」問題で、そもそもバブル時代から続く少子化の傾向に、日本衰退の原因を委ねてしまっている。少子化で労働力に困るなら失業者は溢れていないだろう
著者はそうした「少子化」問題が浮上する原因として、少子化になると困る産業があるためとし、その際たるものが大学だという
大学は新入生の「入学金」(日本独特の制度)と学費によって成り立っているので、子どもが減ると存亡に関わる。新入生に頼る収益構造そのものに問題があり、本来なら社会人の学生が通えるように制度設計すべきなのだ
また投資コンサルタントも、言い訳の種として「少子化」を切り札に使ってくるので、注意が必要だ
もう一つ溜飲を下げるのは、返す刃で外国に対する幻想を打ち砕くところ
日本人の若者が欧米の若者に比べてだらしないという俗説も、現実の大学制度を比較してヨーロッパは学費が安く、アメリカも学費は高いが結局金持ちの親が出すし、奨学金もあとで返さない(返す必要がない)例が多いという
欧米のほうが制度が充実しているだけで、金持ちの親に頼ること自体は同じなのだ
著者は誤った欧米に対する認識から、強い個人主義である「自立の鬼が生まれ、日本人同士を苦しめることになっている。この「自立の鬼」の乱立から「相互依存」への流れに変わるべきだとする
冷静に考えると、イタリア人である必要がない(イタリアねたが少ない)という中身なものの、間違った認識が当たり前にまかりとおる社会に水を差す良書である
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