『甦るロシア帝国』 佐藤優

タイムリーと思いまして

甦るロシア帝国 (文春文庫)甦るロシア帝国 (文春文庫)
(2012/02/10)
佐藤 優

商品詳細を見る


ロシア帝国はいかに復活するのか。“外務省のラスプーチン”がソ連崩壊前後の学生達との交流からその未来を先読みする
本書の内容は直接的なロシア論ではなくて、ソ連崩壊後にモスクワで教鞭をとった経験から、ソ連時代のことを書き起こした回顧が中心である
文庫版の追加として実質数ページのプーチン論が申し訳程度についているだけで、タイトルが後付けの感が否めない(単行本のタイトルは『甦る怪物 私のマルクス ロシア編』
著者の専門であるキリスト教神学に紙数が割かれ、直接のテーマは復活するロシアというよりソ連を崩壊に導いた民族問題に焦点があたる
ただし、この民族問題を克服するためのユーラシア主義”思想によって、ロシアにファシズム(ナチズムではない!)が現れるというのがキモで、ここ最近のプーチン・ロシアを理解する助けとなりそうだ

本来、民族的にも言語的にも差が少なく、兄弟分にも見えるロシアとウクライナがもめるのはなぜか
鍵はソ連崩壊時のウクライナ独立元ハプスブルグ帝国領だったガリツィア地方にあった
ガリツィア地方は紆余曲折あってソ連領となったが、ここにはユニア教徒」と言われる独自のキリスト教宗派があり、中身はほぼギリシャ正教と同じながらローマ教会の優越を認め、カソリックに属していた
この二重性を脅威とみたソ連はユニア教徒を弾圧し、ユニア側の武力闘争も1950年代まで続いた
崩壊直前のとき、ソ連保守派はせめてウクライナ、ベラルーシだけはつなぎとめようとしたが、カナダに移住していたユニア教徒が反発し、独立のための組織と膨大な援助を行った
ソ連から各構成国が独立する上で、大衆より実はエリートたちの影響力が大きかった。現地にいるより外国に住む富裕層のほうが故郷に観念的な情熱を燃やしていて、本書では「遠隔地ナショナリズムと呼ぶ
つまるところ、今あるウクライナを作った人たちは反ソ連=ロシア感情が強く、ソ連的帝国を目指すプーチンとはまるでそりが合わないのだ
ちなみにクリミアに関しては、フルシチョフが“気まぐれ”でウクライナに移管したといい、ウクライナの民族感情を宥めるソ連の懐柔策だったようだ

キリスト教神学については頭がパンクしそうになるが、カール・バルトによる現代神学では、「神は完全だが、人間が触れるには宗教を通してしかない」→「しかし、宗教は人為であるから不完全である」「宗教を信じすぎると禁止された偶像崇拝に陥る危険がある」という域にあるらしい
神学というと神を前提としたガチガチな話だと思いきや、著者と話す学生には「キリスト教の人格神がしっくりこない」とぶっちゃける者もいて、ずいぶん広がりがあるものだとイメージが変わった
ビザンチンを継承したロシア帝国には皇帝教皇主義(カエサルパピスム)の伝統があり、指導者が個人の内面を指導する発想はレーニン、スターリンにも通じる
そして、共産主義に変わり得るユーラシア主義とは、ロシアをヨーロッパとアジアにまたがる特別な“世界”と考える思想で、マルクス主義を飾り物にしたソ連は実はユーラシア主義の帝国だという見方もある
プーチンはグローバリゼーションから地域ブロック経済化が進むことを読んで、ロシア中心の勢力圏を作ろうとしているが、そのブロックの中ではソ連時代の共通語であったロシア語が力を持ち、ロシアを通して情報が伝達される
プーチンの経済思想が近代経済学ではなく、KGBで叩き込まれたマルクス経済学の国家独占資本主義論にあるとされ、反グローバリズムが濃いのは間違いない。割拠主義だから、クリミアの件で国際世論に叩かれることなど、屁とも思っていないのだろう


関連記事 『自壊する帝国』
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
カテゴリ
SF (24)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。