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『播磨灘物語』 第1巻 司馬遼太郎

大河も影響はあると思うが、出来がぁ……

新装版 播磨灘物語(1) (講談社文庫)新装版 播磨灘物語(1) (講談社文庫)
(2004/01/16)
司馬 遼太郎

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三人の天下人を渡り歩いた黒田官兵衛は、播州姫路に生を受けた。黒田家は流人だった祖父から地域に定着し、父職高の代に有力国人である小寺家の家老に成り上がっていた。22歳にして一番家老となった官兵衛は、気の趣くままにキリスト教に入信し、急変する時代を前向きに歩んでいく

稀代の知将と謳われた黒田官兵衛の半生を描く歴史小説
最近出た新書で、実は「軍師」といえる存在ではなかったと明かされた官兵衛だが、本作では講談における「黒い軍師」となることを前提に、田舎にいた早熟の青年が天下を狙うまでの謀略家となるまでの成長の物語になっている
小説の官兵衛は、司馬お好みの合理主義者でリーダーに相応しい臆病さを兼ね備える人物で、才気活発ゆえに凡人たちを振り回す若さがある。あくまで「軍師」キャラであり武将としての活躍は薄く、大河ドラマでも描かれた青山・土器山の戦いも割愛されていた
第1巻では、家老の身で上洛してキリスト教に入信するなど、史実を知ると意外に強引な展開も多く、黒田家の由来から祖父重隆の成り上がり方など司馬の旺盛な想像力が働いていて、大河ドラマを脳内補完できる

小説では官兵衛とキリスト教の関係が実利的に扱われている
叡山の腐敗などで既存の仏教が没落するなか、外来のキリスト教が信仰を集めるようになり、京の都でもイエズズ会のビレラのもと、意外な貴人が集まったりした
官兵衛も粗末な教会で、将軍家に仕える細川藤孝和田惟政と知り合う。キリスト教の教会は、神の下に平等ということで身分が違う者同士が気兼ねなく話すサロンとして機能していたのだ
すぐ後に興隆する茶道の茶会にも、似たような機能があり、変転の激しい時代では大事な情報交換の場となったのが分かる
官兵衛も半ば流行りに触れるように入信したものの、一婦制を守っているのは不思議。嫁の名前が「光」(てる、みつ)ではなく、お悠となっているので、書かれたときには史料が見つかってなかったのだろう
大河では嫁の実家・櫛橋が毛利寄りとなっているが、小説では別所家の影響で信長寄りとなっている
この時代の正室は、相手の家からの外交官みたいな立ち位置であり、話したことが実家に漏れる緊張関係にある。小説でも妻を愛しつつ仕事のことは語らない関係で、ドラマのように夫婦一体で事に当たるとはいかなかったようだ

第1巻では官兵衛から時代の中心である上方を往復しているが、ページが進むごとに時代が播州に近づいてくる
摂津の国は信長に取り立てられた荒木村重によって制圧された。行政区分のせいで摂津=大阪のイメージが濃いが、この時代の摂津国は兵庫県南東部にまでまたがっている
荒木村重は一向宗の補給路を断つべく、花隈城を建てているが、これが今のどこにあるかというと神戸市中央区なのだ
信長方についた別所氏の三木城は、神戸市のすぐ隣で、黒田家の姫路小寺家の御着も遠からぬ位置にあった。播磨の国人たちもさぞ震え上がったことだろう
大河ドラマもこうして地図で見せてくれれば、分かりやすくなると思うんですけどねえ


次巻 『播磨灘物語』 第2巻

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