【DVD】 『日本の悲劇』

日本の母はどこへ行く

木下惠介生誕100年 「日本の悲劇」 [DVD]木下惠介生誕100年 「日本の悲劇」 [DVD]
(2012/08/29)
望月優子、桂木洋子 他

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熱海の旅館で働く春子(=望月優子)は、女手一人で娘・歌子(=桂木洋子)と息子・精一(=田浦正巳)を育ててきた。戦後の混乱のなか、ときには闇米を買い体を売って子ども達の学費にあててきた。しかし母親の身上を知った子ども達はその煽りを受けることもあって、精一は医者の家に養子縁組しようとする。独り身になった春子は……

旧エヴァのサントラで言及されていたので、観てみた
日本独立直後の1953年放映で、冒頭や随所に当時のリアルタイムの映像が挿入されている
下山事件、朝鮮戦争の戦況、再軍備反対のデモと戦後逆コースを象徴する時事ニュースとともに、生活者の苦難や多発する凶悪犯罪の新聞記事が写され、母子の物語に入っていく
本当の“日本の悲劇”とは、一面記事になるような出来事ではなく、ひとつの家庭から、足下から起こっていると言いたげだ
同じ焼け跡をくぐりぬけた人間でも、春子は生きるために子どものためにがむしゃらに生き、歌子や精一は変節する大人たちを見て「誰も信用しないこと」を学び、物事を冷淡に眺めていた
戦争と占領という急激な社会変化のなかで失われていった家族の絆は、高齢化が進行する現代にも突きつけられている問題である

核家族化が当たり前の現代人からみれば、春子の願いは身勝手なものに見えるだろう
戦前の家族観でいえば、長男は嫁をもらい家を継ぎ母親と暮らし続けるものだった
しかし戦後は個人の選択を重んじられ、成人してから実家を離れ、自ら家を持つのが理想とされた。いわゆる核家族化である
精一の選択は自らの立身と同時に、春子の生活向上もいちおう視野に入っているのだから、彼の視点から立てばまったくの親不孝でもない
体が大きくなっても社会的な力が伴わず、いつでも子ども扱いされることに忸怩たる想いを持つ年頃である。親の行状を事情も知らずに汚らわしく思うのもむべなるかなだ
ただし春子からすると、家から息子が消えるなどありえず、母親の役目が奪われることは耐え難い。個人主義を肯定する視点から見れば、母親として以外の自分を持てなかったゆえの悲劇と観ることもできるが、懸命に戦後の混乱を生きた春子にそうした余裕を求めるのは酷だろう
また、春子がただの人となり寂しく駅のホームを歩いて飛び降りるラストは、核家族、個人主義が自明の社会で高齢者が孤独死する現実と重なり、精一たちの将来にも思えてくる
実の息子より他人と心が通うところ『東京物語』にも通じる、皮肉な真実である

とまあ、社会性の強いテーマを持つ映画だが、2時間弱を見飽きることはなかった
流しの歌手(=佐田啓二)が奏でるギターに始まりギターに終わる構成で、序盤には板場で7~8分役者が入れ替わり立ち替わり登場してカメラが回り続けるシーンがあって、どこまで続けるのかとハラハラさせられた。さすが黒澤と並び称される名匠である
50年代と終戦直後の混乱を追いかけるだけでも、21世紀からすれば新鮮で歴史資料としても面白い
時代が時代だけに露骨な性描写はないが、売春、強姦、不倫、暴力と、やれる範囲でその存在を匂わせている。エヴァとの直接のつながりはよくわからないが、観られるべき名作なのは間違いない


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