『ノルウェイの森』 上巻 村上春樹

日本文学の集積

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
(2004/09/15)
村上 春樹

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37歳の僕は飛行機で流れる「ノルウェイの森」に、辛い記憶を呼び覚まされた。牙l区政時代の僕は、幼馴染のカップル、直子とキズキに知り合った。親友のような三人だったが、ある日キズキはなんの前触れもなく自殺してしまう。慰め合うように直子と寝たあと、直子もまた忽然と姿を消した。大学寮内の先輩と放蕩を重ねる僕のもとに、ある日直子の手紙が来る

近年、映画化もされた超有名作品。「はなきんデータランド」で毎週1位だったのが懐かしい
河合隼雄の対談「翻訳調の文体を獲得したものの、それだけではやっていけないのでリアリズムの文体に取り組んだ作品」と作者は語っていた。そのとおり、読みやすい自然主義的な文章になっている
キズキとの三角関係は夏目漱石、乾いた都会の風俗は三島由紀夫や石原慎太郎、山の奥の療養所は堀辰雄、と過去の文学を明確に引き継いでいる
本人の持ち味と違う方向への取り組みがあって、それが作品の間口を広げ、バカ売れにつながったのではないだろうか
もちろん形骸化した学生運動、仲間内でギターを弾くヒッピーぶり、階級を引き上げてくれるような文学や音楽の符牒などが大学生活の記憶を呼び戻したのも大きいだろうけど

大学生活については作者の実体験なのだろう、特に自然主義的な描写で貫かれている
時代を1968年から69年と明確に記され、大学寮では毎日国旗が掲揚され、国歌が流される。「大学闘争していたやつが、負けると単位を取りに授業に出る」など、生々しい逸話も取り上げられている
学生同士が過剰にコミットメントしていた時代に、僕はノンポリを貫き消費生活を営む。高学歴で外交官志望、理想的な女性を得ながらナンパにいそしむ永沢などは、その境地の向こうにいるエースだ。個人を生きるために関係を切り離していく
作者自身はデタッチメント時代の作品と位置づける。しかしながら、関係を絶って行く果てにコミットメントへの出口がすでに見えている
上巻の後半に登場する診療所は、世間から途絶したデタッチメントの極致でありながら、なかに住む人間は互いに励ましあって生きている
“患者”の一人であるレイコは善良な配偶者を得ても、あることをキッカケに入園している。作者いわく本作は恋愛小説だが、恋愛が万能でないことを前提とされているのだ

作品のタイトルはもちろん、ビートルズの「ノルウェーの森」
この曲から直子と過ごした森のイメージが広がり、“僕”の心を揺さぶる
しかし、歌の原題は「Norwegian Wood」ノルウェイ製の家具が正しい。高嶋忠夫の弟、バイオリニスト高嶋ちさ子の父である、高嶋弘之がイメージと営業的判断で意図的にこの邦題をつけたようだ
村上自身はこのことを把握しているようで、ジョージ・ハリソンの関係者から「Knowing she would」(=彼女がやらせてくれると知っていた)の言葉の語呂合わせ「Norwegian Wood」としたという説を聞いたそうだ
ならば、性描写が多いのも致し方なし


次巻 『ノルウェイの森』 下巻

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