『峠』  上巻 司馬遼太郎

生まれた場所が違ったら?

峠 (上巻) (新潮文庫)峠 (上巻) (新潮文庫)
(2003/10)
司馬 遼太郎

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風雲を告げる幕末に、雪深い長岡藩から一人の男が江戸に出た。戊辰戦争で官軍を苦しめた河合継之助である。将来の藩を背負うと信じた彼は、いくつもの塾をくぐるも、知識を増やさず歴史や世界の向こうにある原理にだけ目を向けていた。諸国漫遊を重ねているうちに、長岡藩も動乱に巻き込まれ継之助もひのき舞台に上がる

長岡藩の藩政改革を行い、七万石の小藩に強力な洋式軍隊を作り上げた河合継之助が主役である
『八重の桜』ではチラとしか出てこなかったが、小兵で山県有朋が率いる官軍を破りその名を天下に轟かせた
上巻は地味だ。ほとんどがうだつの上がらぬ浪人時代の話なのだ
塾には通うものの、人が書物を読んでいる間は女郎小屋に通い、なじみの女が火事に会えば真っ先に突っ走る。黒船が来て沿岸警備を命じられても、無駄だと言ってまたもうつつを抜かす
しかし、ポイント、ポイントは抑えていて、未来の家老になるために改革者の先輩である山田方谷の元へも修行の旅に出る
日本のジャーナリストの魁である福地源一郎(桜痴)やスイスの時計商人ジェームス・ファブルブラント、大垣藩の小原鉄心、『資治通鑑』を校訂出版した土井聱牙など、歴史に埋もれた有名人(?)の薀蓄が身につく巻である

小説の継之助は、陽明学の信奉者らしく知識よりも真理に重きをおき、テクノラートというより指導者を志向している
しかし自らの知能を隠さない性格は、伝統的組織のなかでは昇進できず、乱世を必要とした
ただ彼は謀反人、革命家ではない。あくまで長岡藩士としての枠のなかで行動し、「その範囲内で深く井戸を掘るように考えていく」(P262)
その生き方は陽明学派の典型というより、名政治家として一生を終えた王陽明その人に近い
大名の側近として幕末の風雲に望む立場は、薩摩の西郷、大久保、長州の桂小五郎と変わらず、生まれる場所が違えば、明治の元勲となる可能性もあったのだ
組織人の立場から改革を志すところ、悲壮な戦いに挑むところは、郷里の後輩である山本五十六に重ねてそうなので、そのへんに注目して次巻以降を読み進めて行きたい


次巻 『峠』 中巻
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