『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 河合隼雄 村上春樹

ハルキ小説のネタばらし!?

村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)
(1998/12/25)
河合 隼雄、村上 春樹 他

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村上春樹とユング心理学の第一人者、河合隼雄の対談
1996年が初出で、実際の対談は『ねじまき鳥クロニクル』の第三部が刊行された1995年11月に行われた
両者には以前からの付き合いがあって、作品については話し合わないものの刺激を受け続ける関係だったようだ
対談は両者が聞き上手なので円滑に進む。分かりやすい言葉で率直に交わされるから、頭に入りやすくあっという間に読み終わってしまった
小説家としての出発点と岐路、現代日本の精神病、小説や説話の果たす役割、学生運動の総括、と難しいテーマに本音でぶつかっていて、読後には費やした時間と反比例する充実感が残った
ハルキ作品に縁がなくても読んで損のない対話である

村上春樹が創作にあたる心境が虚心なく語られている
自らを癒すことを作品を書く動機としつつも、(プロの作家であるがゆえに)他人を癒さなくてはならない(河合氏によると、芸術家とは自らの病から端を発して、世界の病、時代の病を描く人をいうらしい)。
サラリーマンになることを潔しとせず、好きに生きることを信条とする村上氏は、文学で成功するものの文学界にも漂う村社会の圧力に嫌気がさし、アメリカに逃れる
アメリカでは「個人主義」「湾岸戦争」に衝撃を受けた
日本では「個人」になることが目的たりえるが、アメリカではそれが大前提であり問題にならない。初期の村上氏が意図したデタッチはアメリカではテーマになりえなかった
湾岸戦争においてはアメリカ人に日本の事情を説明しても受け付けてもらえず、日本で信じられていることは日本でしか通用しないという事態に遭遇した。日本の戦後的価値がまったく世界で汎用性を持たなかったのだ
興味深かったのは、小説を書く行為は(ビデオゲームの)ロールプレイングゲームに近いとしているところだ
メッセージ性から書き下ろすのではなく、それを探しながら書き進めるという
ゲームとの違いはプレイヤーが自分自身であり、プログラムを作りながら同時にプレイもしている。プレイしている間はプログラムした記憶は喪失している。「右手のやっていることは左手は知らず、左手のやっていることは右手は知らない」
ゲーム体験がない世代からは誤解されやすい表現だが、ファミコン世代以降ならば受け止めやすいのではないだろうか
RPGとは説話のゲームであり、小説と物語・説話をつなげる試みこそハルキ作品の意義なのである

夏目漱石の時代から、文学は時の心理学の影響を受けてきた。ハルキ作品とユング心理学は切っても切り離せない
初めてユング心理学を日本に持ち帰った河合隼雄氏は、日本と欧米との違いを良く分かっている
意外だったのはPTSDなどはアメリカでは多いが、日本では少ないという話
アメリカ人は不幸を個人の責任に引き受けやすくショックを受けるが、日本人は全体や他人に転嫁して解決するらしい。だから周囲と軋轢を起こす代わりに、神経症的に苦しむ割合は少ないという
その周囲に迷惑をかける状態を「症状を形成する力がない」とし、自分の受けた傷やトラウマを自分のなかで処理しない傾向があるという。この性格は空気に流される日本人の性格、責任の所在がはっきりしない日本の組織にもつながってくるだろう
学生運動の顛末から導き出されるのは暴力性」の問題で、何をやるにも必要になる「暴力」(権力、政治力込みのパワー)への自覚なしに世の中は変わらない。その「暴力」への嗅覚に優れているのが、村上氏に言わせると村上龍で、自分は違ったかたちで「暴力」に触れなければならないとのことだ
ハルキ作品への理解のみならず、日本社会と日本人を考えるのに大きなヒントをくれる文庫本である


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