『日本の難点』 宮台真司

学生時代はこの人の本を良く読んだ。右から左に抜けてしまったが

日本の難点 (幻冬舎新書)日本の難点 (幻冬舎新書)
(2009/04)
宮台 真司

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現代日本はいかなる状態であって、どういったことが必要なのか。人間関係、教育、幸福からアメリカの変化、日本の目指すべき姿まで語る「宮台版・日本の論点」
最初に誰もが抱える、コミュニケーションの問題から始まり、子どもへの教育幸福とは何か、と進む。学生、信者のみならず、普通の人でも入りやすい構成が意識されていて、文章もキモの部分は気さくで分かりやすい
学者の義理で専門用語や引用元の参照、カタカナ言葉の多さなど読みにくい要素もあるが、それも問題を単純化しない誠実さの表れと捉えよう
いじめ問題、早期教育、セクハラといった具体的な問題に対して、明解な論理と処方箋を示すのも宮台流で、考える土台を提供してくれる手軽な一書だ

ひとつの章で様々な議論の前提となるのが、現代は「社会の底が抜けた時代」であるという認識で、ポストモダン=後期近代、「再帰的近代」といった言葉で表現される
再帰的近代はブレア労働党政権のブレーンを務めたアンソニー・ギデンズが提唱したもので、初期の近代化は自然や伝統を文字通り近代化するものだったが、その使命が果たされた後は目的、目標が無くなり手段が目的にならざるえないということらしい
本書では、技術と社会の進展から「流動性と複雑性の増大で自明性が失われた結果、何事につけ《するも選択、せざるも選択》という具合に諒解されざる得なくなった社会」(p117)とされ、共同体の空洞化に抗うのか否か、失われた共同体を再建するか否かが、そこに生きる人間の肩に乗りかかってくる
すでに近代化しているのだから、共同体は個々人の決断のもとにしか残らないのであって、戦後の醜い国土開発も日本人ひとりひとりが共同体をないがしろにしてきた所以というのだ
「小さな政府」対「大きな政府」の命題に対しては、「小さな政府」と「大きな社会」というセットもありうるとし、失業やいじめ、自殺をフォローできる「大きな社会を作ることが肝心であって、「小さな政府」=「小さな社会」という誤解が悲劇を招いたとする
社会からこぼれた人の問題を国家に委ねる「大きな政府」が不可能だとすると、懐の深い社会の建設が必然的に求められるだろう

宮台本を読むのは久しぶりだ。目新しかったのは、教育論における「スゴイ人」という言葉
スゴイ人とは、有無を言わせず人に「感染」(ミメーシス:宗教学の用語)させられる人のことで、言葉ではなくその行動で「利他」を体現する“亀鑑”ともいえる存在
その存在は子どもへの教育やいじめ問題を解決する決め手で、厳然とした態度で事に当たることがいい方向に転がしてくれる
おそらく、著者がいう「市民リーダー」にも求められる性質だろう
日本の目指すべき指針としては、対米中立」「重武装を唱える。「重武装」とは、敵地攻撃能力を持つことである。もちろん、これを実現するのに様々な難関があることは百も承知で、それまでの方便として「対米従属」「軽武装」の従来路線を認める
食糧自給率への警戒感(他国に依存することは戦時ならずとも、外交で減点)や国土の荒廃に対する怒り、柳田國男への言及なども意外で、あとがきのチェ・ゲバラを「スゴイ人」のモデルとして持ち出した!
氏の考えが分かりやすくまとめられているので、宮台社会学の入門書として本書は最適だ


再帰的近代化―近現代における政治、伝統、美的原理再帰的近代化―近現代における政治、伝統、美的原理
(1997/07)
ウルリッヒ ベック、スコット ラッシュ 他

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