『プレイバック1980年代』 村田晃嗣

60年代生まれの鶴田浩二ファン

プレイバック1980年代 (文春新書)プレイバック1980年代 (文春新書)
(2006/11)
村田 晃嗣

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21世紀をにぎわかす問題は、1980年代に原型ができていた!? 2013年、同志社大学学長に就任した著者が80年代を振り返る
本書は2006年初出で、小泉政権から第一次安倍政権に移った年だった
いきなりだが、冒頭を引用する

(1)現職の首相が病死した。
(2)その結果、「想定外」の人物が首相になった。
(3)日米同盟が大幅に強化された。
(4)世界中で反米機運が高まった。
(5)首相の靖国神社参拝が外交問題化した。
(6)自民党が選挙で歴史的な圧勝を遂げた。
(7)民営化が政治的争点となった。
(8)ベンチャー企業のオーナーが逮捕された。
(9)天皇と皇室への関心が高まった。
(10)首相が戦後政治との決別を表明した。
(p6)

実はこれ、ゼロ年代のことではない。80年代の日本社会に起こっていたことなのだ
(1)は大平正芳、(2)は鈴木善幸、(3)はロン・ヤス関係、(7)は国鉄や電電公社、(8)はリクルートの江副正浩、(10)は中曽根康弘による「戦後政治の総決算」
80年代で起こったことがそのまま繰り返されたわけではないが、過去にあったパターンと把握すれば慌てることはない
80年代の前例から今を知ろうというのが本書の本懐だ

かといってまとまった80年代論なわけでもない
時代区分からは、自身が生まれた1964年から振り返り、60年代、70年代への相応の紙数が割かれている
アメリカ外交と安全保障が専門なことから、時の国内政治、アメリカを中心とした国際情勢が中心ながら、世情をにぎわせたアイドルや風俗、社会問題などにもたぶんに触れている
著者の好奇心が赴くままに書かれたようで、一個人の体験と政治、経済、外交の問題が渾然と絡み合い、ごった煮の感はぬぐえない(苦笑)
しかし、主人公ははっきりしている。行革を推進した中曽根康弘であり、冷戦を終結させたロナルド・レーガンである
中曽根康弘はレーガンの新冷戦を受けて、中立色の濃い経済優先の外交から日米同盟重視に切り替え、防衛費のGNP1%枠突破を目指した。国内においては、最大の国有企業であった国鉄の民営化を勧め、内閣官房を強化して大統領的首相を目指した
小泉内閣の前身として、中曽根内閣はあった
しかし、大きな違いは田中派の支持で政権につけたことで、田中角栄の失脚と経世会(竹下派)の旗揚げという地殻変動のおかげで長期政権が可能だった
後継の竹下内閣はリクルート事件で倒れ、バブル経済のなか政治は混迷を深めることになる

ロナルド・レーガンは人権外交のカーター政権の後を受け、「強いアメリカ」「小さな政府」という矛盾する政策を推進した
結果、財政と貿易の「双子の赤字」を生むものの、冷戦を終結させて共産主義陣営の崩壊へ導く
日本の対米貿易黒字はアメリカ経済界の反発を招き、中曽根首相による「ロン・ヤス」関係もその穴埋めのために要求されたものでもあった。かの在日米軍に対する「思いやり予算」も、貿易関係の付け届けに端を発している
新冷戦時代にこの関係は機能したものの、いざ冷戦が終結に向かおうとするとアメリカは日本との交易条件の転換に向かい、それは「ロン・ヤス」関係でもいかんともし難いものとなった
「スーパー301条」などの制裁法案や日本の市場開放が議題に上り、プラザ合意による円高も日本経済の質的変化を要求した

80年代と現在と何が違うのか
至極とうぜんのことながら、世代の入れ替わりだろう。80年代にはファシズムと軍国主義に直面した世代が次々と退場した
1918年生まれの中曽根田中角栄と同い年で、太平洋戦争では海軍の主計を務め実戦も経験している。ロナルド・レーガンは七歳年上の1911年生まれで、戦時中はプロパガンダ映画の制作に関わった
小泉純一郎は1942年生まれの戦中派で、安倍晋三は1954年生まれなのだから、戦争や改憲に対する認識もどこか軽くなってくるわけである
ちなみに著者は1964年生まれであり、同い年の芸能人に近藤真彦、薬師丸ひろ子、阿部寛、椎名桔平、山口智子を挙げている。薬師丸ひろ子1981年に『セーラー服と機関銃』で「カ・イ・カ・ン」と叫び、阿部寛1985年に『メンズ・ノンノ』のカリスマモデルとなっていた
『北斗の拳』をして「漫画もポストモダンに達した」とか、『1984』は「マスメディア(現在はインターネット)が偉大なる兄弟として現実化した」とか、サブカル方面で大雑把だが、それもご愛嬌。明確な論はなくとも、軽快で七味の効いた文章は何かヒントをくれるはずだ
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