【電王戦回顧】将棋世界七月号

電王戦直後の六月号には、ダイジェスト風の記事しかなかったが、今月号には出場者二人の談話に、世界コンピュータ選手権の模様が載っていた

将棋世界 2013年 07月号 [雑誌]将棋世界 2013年 07月号 [雑誌]
(2013/06/03)
不明

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<われらはかく戦った船江恒平・佐藤慎一が語る電王戦>

船江五段は第1回電王戦後に米長会長の打診に即答し決定、佐藤四段も会長に即答したものの、「負ければ棋士全員の問題になる」と立候補しなかったが、締切日当日に理事から決定の通知を受けたという
立候補者は五人以上いたそうだから、どういう基準で出場メンバーが選定されたかが気になるところだ
6月から月一で対コンピュータの勉強会が開かれたが、対戦ソフトが決まるまでは両者とも特別な対策はとらず、1月から提供された『ツツカナ』で練り始めた


○電王戦第二局 対PONANZA戦

佐藤四段によると、定跡の認知の仕方が人間と違うらしく、第一局で習甦が指した角換りの桂損の攻めはツツカナもやってくるらしい
第二局において狙っていた作戦は、相矢倉から5二角と打たせて無理攻めを咎める形で、3月にニコニコで企画された『GPS将棋に勝ったら100万円』でも話題になった手だそうだ
プロといえどソフトの実力を認め、序・中盤に隙を突いていく戦略をとらざる得ないのだ
実際の将棋は一歩持って後手(プロ)のやや作戦勝ちになったものの、その後互角となり、先手・ソフトの6六銀に対する5五歩で再び優勢となる
問題はソフトが4四金と打った局面。直後には3二金より2六馬と入玉狙いがいいとの指摘があったが、実際には入玉できるかは敵陣に成駒がいない分、難しい
佐藤四段自身は、7三桂と馬にあてたのが直接の敗着と見ていて、7七歩→同銀といれてから桂を打ち先手の馬を追う手順のほうがよかったとのことだ


○電王戦第三局 対ツツカナ戦

ツツカナに対する船江五段のイメージは、駒の効率を重視する美しく筋のいい棋風で、中盤は自分よりやや上という評価をしていた
ソフトは角換りだと攻め筋が少なく下手で、横歩取りも定跡を外れた途端に後手の評価値が下がるのでソフト側から横歩は取らないという想定があったようだ
強いのは振り飛車と居飛車の対抗形で、盤の左半分だけの局地戦が得意で、人間の穴熊、ソフトの四間飛車銀冠の形でもソフトは精神的にめげないので手強いらしい

ソフト側の出だしは三手目に7四歩をつく意表の戦術をとった
しかし、船江五段は弟弟子の得意戦法であり、研究会でも指される手ということで、とまどいは少なかったよう
結局、普通の角換りに戻り先手だけ一歩持ち、手に詰まったソフトの無理攻めが出て優勢となる
後手・ソフトの5五香が妙手で、先手を歩切れにしてギリギリの勝負にもつれこむが、後手の6六銀が悪手で同竜に金銀交換して角成で先手玉を挟むと、後手玉が長手数で詰んでしまう。ソフトは20手以上読めないので、こういうミスが起きるそうだ
銀得でプロ側の優勢がはっきりしたが、そこから細かいミスを重ね、船江五段自身は2五桂打を悔いていた
ソフトには「勝負手」という概念がなく、悪くなったら相手を震わす手を指さずに後退していく。形勢がいいときほど大胆に進めるべきだったと
2六香と歩を払ったのも悪手で、香の頭に桂が邪魔して駒が前へ進まなくなってしまった


二人がともに語るのは、ソフトと練習しているうちに実力が上がったということ
プロ並の強さを持つソフトが万人の傍らに存在していくとなれば、アマチュアの棋力を底上げし、引いては馬鹿強い子ども達を生み出すかもしれない
電王戦の全体については、第2回は将棋連盟の側が様子見でメンバーを組んだと想像されるが(必ずしも立候補した棋士から選ばれていない!)、三浦八段が負けたとあっては精鋭を送り出さざる得ないだろう


<ボナンザ、7年ぶりの戴冠 第23回世界コンピュータ将棋選手権>

5月3日から行われた世界コンピュータ将棋選手権にも、多くのページ数が割かれている
電王戦二度出場の「Puella α」は残念ながら不参加だったが、他の上位チームを加えた40チームが参加した。中には女流棋士が参加した「メカ女子将棋」というソフトも。電王戦に出ることになったらどうする気なのだろうか(苦笑)
決勝は総当りのリーグ戦で、事実上の決定戦は前年優勝の「GPS将棋」と2006年優勝の「Bonanza」の対決
終盤は東大駒場キャンパス804台のコンピュータをつないだGPSの勝勢となったが、ここで異変が起こる
GPSが長手数の詰みを見逃し、一秒差しモードで時間切れになってしまったのだ

GPS陣営の話では、詰みは明らかに読みきっていたという
決勝で用いた803台中、3台が詰み探索専用で、詰みがあれば「司令塔」となるコンピュータに初手を知らせる仕組みだった
しかし、詰みを見逃した局面では残り時間の関係から三秒以内で着手する設定にしていたが、その時間内に詰みを読みきれず、通常の探索マシンの意見が採用され7八金を指してしまったそうだ
……ということは、結局短時間で読みきれなかったわけではないか(笑)
たとえハイスペック、大規模クラスタといえど秒単位の着手は精度が落ちる。将来的にはスペックの向上で補えてしまうだろうが、対コンピュータ戦に時間を使わせる戦略は有効だろう

*13’7/18 その後、匿名のコメントで情報を頂いた
 詰みの手が選ばれるのは「司令塔」に詰み手順の情報を送って、前ノードが処理された後なのだが、タイミングの問題で採用されなかったらしい
 ようはプログラムに瑕疵があって、一秒差しモードで露呈してしまったということだろうか
 素人の僕には深入りできないので、どういったことがありうるのか、どなたか記事にしてみてください(汗


結果、順位は1位「Bonanza」2位「GPS将棋」3位「Ponanza」4位「激指」5位に新登場の「NineDayFever」となった
2位に大規模クラスタのGPSが入ったということは、来年に電王戦があるすると、誰が戦うことになるのか。連盟にとっても悩ましいところだろう
4位の「激指」は市販されているシリーズなので、対策は立てやすい?
5位「NineDayFever」Bonanzaをベースにした新鋭で、5位までに三つのBonanza系が食い込んだことになる


第四局については特になく、内館牧子のコラム「月夜の駒音」で開発者の態度を咎めたのみ。塚田九段の涙には“あのおっさん”の発言が絡んでいたようだ
第五局のことは、青野照市九段の「将棋時評」でコンピュータがクラスタを組んだ点に違和感をおぼえたと触れられていた。コンピュータがチームを組むなら、棋士側のチームを組んでというわけだが、他のプロに言わせると棋士同士なら喧嘩になるという話もある(苦笑)
GPS側の仕掛けに関しては、「プロが考えついてもまず絶対にやらない手だから、将棋にはまだ新しい可能性があるものと思わされた。」とのことだ
他の記事では、コンピュータ将棋から生まれた新手にも触れられていて、コンピュータ将棋とプロ棋士の関係が新時代に入ったことを再認識させられた

将棋世界を買ったのは学生時代以来だが、出版不況の中、高いクオリティを維持しているのに驚いた
敵役ともいえるコンピュータ将棋を真正面から取り上げ、『森田将棋』の開発者・森田和郎さんの追悼座談会まで組まれている。コンピュータ将棋に興味がある人には間違いなく買いだ
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