『項羽と劉邦』 上巻 司馬遼太郎

中華王朝の原点

項羽と劉邦 (上) (新潮文庫)項羽と劉邦 (上) (新潮文庫)
(1984/09/27)
司馬 遼太郎

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秦の始皇帝は中国史上初の統一帝国を創り、戦国時代に終止符を打った。しかし、始皇帝が巡幸中に逝去するや、その圧政への反動が起こり、陳勝・呉広を初めとする流民の蜂起から天下は再び新たな乱世に突入した。劉邦は任侠の身分から人望をもって沛を手中に収め、項羽は叔父項梁とともに楚人を率いて立ち上がる

司馬の数少ない中国もので、横山光輝の漫画の原作的な位置にいる作品だ
吉川英治を意識してか、どちらかの立場から価値を談じる講談としてではなく、悪名たかく敗れていった者たち、項羽、宋義、胡亥はおろか宦官の趙高ですら、単なる悪とみなさない
本人たちはそれぞれの信条や目的で行動しただろうと、現代的に読み解いていく
劉邦と項羽をつかった人望論が小説の主題だが、上巻においては項羽側にフォローが入る
彼の出身であるは、東南アジアの南方系が濃く言語も違うことから、中原の民から荊蛮と見なされていた
楚人を主力とする項羽の軍は黄河流域では浮いていて、文化の違いが大きな壁となっていた

始皇帝は広大な大陸を法家思想と郡県制による一つのシステムを治めようとした
秦の峻烈な法家思想は強固な官僚制を生み、その組織力は他国を蹂躙した。それまで伝統的で地縁の濃い諸侯に治められていた民は、慣習とは別次元の法の存在に不慣れだった
絶大な権限と責任を持って任じられた役人たちも、根のない落下傘部隊のような存在だから、具体的に民を動かすために、劉邦のような任侠人の仲介役を必要とした
小説に描かれるこの構図は秦以後も統一国家で繰り返されたもので、今の中国ですらこうした力学が動いているように思われる
いわば、中国の権力構造の原型にみたいなものが秦の統治下に始まっているのだ
誰が天下を握るにしても大陸を治めるには秦の仕組みを引き継がざるえず、貴族主義が強い楚にはこれも障害となった

司馬の描く項羽は、かっちょいい
本来なら粗暴なキャラクターは好みにそぐわないはずだが、ある種の合理精神を見出したのか魅力的に描くのである
楚人でありながら貴族主義の権化である宋義の首を跳ねる、規格外の人物であり、乱世そのものと一体化したような存在
その参謀たる范増老荘の人として描かれ、法でがんじがらめにする秦を忌み嫌い、その滅亡を人生の生きがいとする。秦を倒した後など知らぬというアナーキストだ(苦笑)
秦-法家、項羽-范増-老荘、劉邦-儒教と見立ててみると、乱世、割拠をよしとする勢力と統一国家を作ろうという勢力のせめぎ合いが、項羽と劉邦の争いだったのかもしれない

次巻 『項羽と劉邦』 中巻


項羽と劉邦 (1) (潮漫画文庫)項羽と劉邦 (1) (潮漫画文庫)
(2000/11/01)
横山 光輝

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