【DVD】『渚にて』

ヒロインの名はモイラ

渚にて [DVD]渚にて [DVD]
(2011/06/22)
グレゴリー・ペック、エバ・ガードナー 他

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1964年、人類は核戦争で北半球を失った。生き残ったアメリカの原子力潜水艦はオーストラリアのメルボルンに寄港するが、ここにも死の灰が迫っているのだった。あるとき、全滅したと思われた合衆国の西海岸シアトル付近から謎のモールス信号を受信される。潜水艦の艦長ドワイト・タワーズ中佐(=グレゴリー・ペック)は調査を命じられ、原子科学者オズボーン(=フレッド・アステア)、オーストラリア海軍の士官ピーター(=アンソニー・パーキンス)とともに北半球へ向かう

『復活の日』が影響を受けたという、ネビル・シュートの小説の映画化
1959年の製作であり全編がモノクロで、特撮技術の限界から派手なシーンはオズボーンのレースぐらい
それでも技術で誤魔化せないからこそ、本物の潜水艦と空母を使ったアナログにこだわった絵作りは、時代を感じさせながらも重厚なテーマには合っている
筋に関しては、誰がモールス信号を打ったかというミステリーはあるものの、やや起伏に欠けている
しかし、妻子を失ったドワイトと奔放に生きてきたモイラ(=エヴァ・ガードナー)の関係に重点を置くならば、世界の終末に結ばれる完成された恋愛映画といえるだろう

『復活の日』ジャニス・イアンの歌に始まる悲哀とあがきの物語とすれば、本作は退廃的ともいえる狂騒を興じつつ、従容として終末を受け入れる物語である
これだけ悲惨な筋立てなのに、日常で流れるテーマソングはやけに暢気
メルボルンの街では石油の欠乏から自転車と路面電車に馬車が交通手段となり、コーヒーはまずい代替品で作られ、と不便はあるものの普段どおりの生活を送っている。とても世紀末的光景とは無縁である
しかしその日常の裏には、終末への不安が隠れている
若いピーターは妻子が放射能で苦しんではいけないと自殺用の睡眠薬を手に入れ、カーマニアのオズボーンは狂ったようにレースで暴走する
世界の終わりにいたって、夫婦や恋人たちのわだかまりが解けていくところがせつなく、死の街と化したメルボルンに流れる明るいテーマがいっそう哀しみをかきたてる

放射能障害が伝染病のように扱われていたりと、SF映画としては科学考証に難がある。時代が時代だし、ここから放射能の恐怖を測ろうとするのは間違いだろう
核戦争の原因についてははっきりと語られないが、ドワイトがモイラに語った「自分が海軍にいる間、家族を守れると思っていたが、結果は逆だった」の台詞が全てを語っている
核爆弾は相手の国力と戦意を砕く戦略兵器であるから、敵の兵士ではなく国民に多大な被害を与える。つまり核戦争は核兵器の担い手より自分の家族が矢面に立たせてしまう
終盤、教会の集会で掲げられる「兄弟たちよ、まだ時間がある」というメッセージは、ラストに視聴者へ突きつけられる


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ネヴィル・シュート

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