『中原の虹』 第1巻 浅田次郎

満州の西部劇

中原の虹 (1) (講談社文庫)中原の虹 (1) (講談社文庫)
(2010/09/15)
浅田 次郎

商品詳細を見る


謎の老婆から「満州の王者」となる予言をもらった青年は馬賊の大頭目に成り上がった。その馬賊の名は張作霖。破格の待遇で雇われた一匹狼、李春雷は、彼とともに大清皇帝の陵墓へ侵入し、乾隆帝の隠した龍玉を手に入れた。貧しさゆえに家族を捨てた春雷は、張作霖の「王道楽土」の夢に乗る

『蒼穹の昴』の設定を引き継いだ続編で、李春雷とは春児こと李春雲の実兄である
彼は張作霖に従う馬賊で、おそらく扱う時代背景は清朝末期から満州国事変前夜、張作霖が爆殺されるまでになるだろう(すでに作中で予言されている!)
張作霖は馬賊から成り上がった満州を支配した奉天軍閥の長で日本軍との関係も深く、その息子である張学良は日中戦争中に第二次国共合作のきっかけを作ったことで有名だ
張作霖は辛亥革命後に、北京の軍閥たちに戦争を仕掛けたことがあり、国民党政府の内幕が舞台となるはずで、梁啓超をモデルにした梁文秀も深く関わってくることになりそうだ

そんな難しい話はさておいて、第1巻は満州を舞台にした壮大な西部劇
馬を駆る悪党たちがハリウッド映画のような立ち回りを魅せてくれる
やはり、浅田次郎の小説は悪人がよく似合う
いながらにして民から富を吸い上げるお役人に対し、「おれは悪を自覚してやってるし、おまえらよりマシ」という露悪ロジックも、作者にやらせると決まっているのだ
その一方で、そのお役人である袁世凱や徐世昌の立場でも描いているから、作品としての懐も大きい
正直言って『蒼穹の昴』は、李春雲と梁啓超が聖域で守られているようでむずがゆかった。史実の有名人を押しのけての活躍は、歴史小説として複雑だった
今回は主役が張作霖のお付きとして回っていくので、そうした心配は少ないし、最初から悪党として生きているから、それなりの苦難も引き受けてくれるはずだ

『蒼穹の昴』では、乾隆帝を媒体にして清朝の盛衰を表現していたが、今回は満州国の建国者であるヌルハチとその一族が取り上げられている
ヌルハチが国を建てられて、なぜ張作霖が挫折するのか。それともそれは単なる挫折ではなく、次に引き継がれるのか
そこがこのシリーズの一番、注目すべきところだろう
女たちが男の悲哀を表現するために使われている感があって、完全な漢の小説になってしまっているので万人向けとは言い難いが、作者の長所が思う存分発揮されるのではと期待して、次巻を読み進みたい


次巻 『中原の虹』 第2巻

関連記事 『蒼穹の昴』 第1巻・第2巻
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
カテゴリ
SF (25)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。