『珍妃の井戸』 浅田次郎

『中原の虹』はどうしよう

珍妃の井戸 (講談社文庫)珍妃の井戸 (講談社文庫)
(2005/04/15)
浅田 次郎

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義和団の乱で列強に蹂躙された紫禁城。混乱のさなかに囚われの妃が殺された。光緒帝が愛した珍妃は誰が殺したのか。事件の真相を確かめるべく集まった日英独露の高官たちの前に、数々の証人が現れるが・・・。『蒼穹の昴』の後日談にあたる歴史ミステリー

作家と相性が悪いのだろうか、あまり話に乗れなかったなあ(苦笑)
光緒帝の愛妃、珍妃の死イギリスのソールズベリー提督ドイツのシュミット大佐ロシアのペトロヴィッチ銀行総裁日本からは東大教授松平忠永が乗り出すのだが、すこし動機に無理がある
共産主義の脅威に対し立憲君主制を守るため、珍妃の真相を明らかにし光緒帝を保護するとするけれども、百日維新や義和団の乱のあとではか細すぎる珍妃が誰に殺されたかなど、列国にとってそれほど大事なことだろうか
せめて彼ら個人と宮廷につながりがあるとか、動機を補強してもらいたかった
そもそも、他国の人間が光緒帝を守るといって捜査に乗り出すなど、中国側からすれば内政干渉もいいところで、オチで彼らの偽善性が指弾されるものの、最初からそれは明白なので意外性はあってもカタルシスはない
せっかくの凝った構成と軽快な文章が空回りしている印象だ

巻末の解説が分かりやすい
日中比較文化論を専門とする張競が解説されていて、既存の歴史小説の型として、歴史を忠実に再現するものと、定説を覆してもう一つの歴史の可能性を見せるものがあるとする
しかし本作はどちらとも違い、芥川龍之介の『藪の中』の手法を取り入れて、人や立場によって歴史の解釈、ものの見方が変わり、それぞれが真実に並列させているとし、歴史の事実性がものを言うジャンルで、小説の手法を投入した斬新なものと評価している
本作でとられた手法にこうした可能性はあるものの、僕自身は史実の人物をオリジナルのキャラクターに取って代わらせるところから、あくまで架空歴史小説だと思っている
徹底した考証をくわえて歴史小説を偽装するかたわら、自分の書きたい物語を書き泣かせる。『壬生義士伝』などにも見られた姿勢で、作者が書きたいのは正史ではなく演義なのだ
史実にこだわる立場からすると、風説を流布するいかがわしい小説とあいなるが(苦笑)、小説というものは本来、知的というよりいかがわしいものなのである
本作は物語の大枠が微妙なものの、この時代を舞台にした小説は貴重だし純粋な講談、ミステリーとして楽しめると思う


続編 『中原の虹』 第1巻

関連記事 『蒼穹の昴』 第1巻・第2巻
     『壬生義士伝』
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