『中華民国―賢人支配の善政主義』 横山宏章

この国のこの時代にも民主化運動はあった

中華民国―賢人支配の善政主義 (中公新書)中華民国―賢人支配の善政主義 (中公新書)
(1997/12)
横山 宏章

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孫文に始まる中国国民党はなぜ大陸を追われたのか。辛亥革命から南京政府崩壊までの40年を追う
日本にとってもなじみ深い孫文は、チェ・ゲバラのような理想主義者に映りがちだ
しかし、本書で見る孫文は、かなり現実的である
清朝の打倒後の政体として、軍政→訓政→憲政と民主化への段階を示したものの、識字率が低い中国の民衆では早期の民主制はなしがたいとして、訓政に重点を置いていた
袁世凱の帝政、軍閥政治が始まってからは、民主制の弊害も鑑みて総統への絶対服従を要求する革命党を結成し、蒋介石をソ連に留学させて共産党と赤軍の組織原理を取り入れていた
本書では、こうした中華民国の統治を儒教の伝統からくる“賢人支配の善政主義とし、現代の北京政府まで拘束しているものとする

国民党の本質は“訓政”、前衛党にあるのだけど、中華民国内では間欠泉的に民主化運動が起こっている
最初は中華民国の成立時(1912年)で、孫文が袁世凱に臨時大総統の座を譲った後、実質的な指導者だった宋教仁が議院内閣制を導入して12月の選挙で大勝した
しかし翌年3月、袁世凱の刺客により宋教仁は暗殺され、孫文が議会でそれを訴追せず武力蜂起に到ったことから、つかの間の民主制は幕を閉じる

次の機会は、軍閥乱立の時代から蒋介石の北伐完了までの期間
蒋介石の国民党独裁に対して様々な方面から異が唱えられ、胡適、章炳麟、梁啓超らによって連邦制による地方自治、“聨省自治”の運動が立ち上がった。この論者には、わずか二ヶ月とはいえ、毛沢東がいて湖南独立論を唱えている
最も強力な論者が陳烔明で、広東自治運動を唱えてクーデターを起こし孫文を追放している
ただし聨省自治運動には各地の軍閥を正当化する弱みがあり、日本の帝国主義で国民党に風が吹いていく

最後は国共内戦前夜である(1946年)
アメリカとソ連の思惑から、国民党と共産党、その他の諸派を巻き込んだ政治協商協議が開かれ、再び憲法、議会、地方自治が議題に上がった
共産党は民主的な立場をとったがそれは国民党の権勢を切り崩すためであり、民衆の支持を失いつつあった国民党は孫文の構想を否定するという手痛い妥協を余儀なくされた
この事態に蒋介石は協議の結果を強引に修正し、共産党に名分を与える格好で内戦に突入する
本書の、国共内戦に対する記述は意見が分かれるところだろう
スターリンは共産党を嫌って国民党の合同にこだわらせたというが、その一方で占領中の満州を紅軍の根拠地としていたわけであり、アメリカが中国共産党に味方していればという推論も怪しい
ウェデマイヤーの回顧録には、大戦後に国民党への支援を緩めたのが失策とあった

国民党と共産党の違いがイデオロギーの部分でしかなく、体制にほとんど差がなかったのには驚かされる
一般民衆からすれば、国民党から共産党に乗り換えるにあまり躊躇はなかったのではないだろうか
改革解放後の中共政権は社会主義市場経済と称してマルキシズムを形骸化させて、孫文の訓政に立ち返ったのであり、台湾政府の民主化はそうした中共に対する差別化だとも考えたくなった
本書は国民党のみならず、孫文以前の改革運動から、五・四運動に始まる文学革命マルクス主義の流入沿岸部の工業化による労働者階級の出現など、様々な動きを詳細に綴っている。特に日本人は単純化して見がちな時代なので、中国視点で経過を追うのに最適の書だと思う


第二次大戦に勝者なし〈下〉ウェデマイヤー回想録 (講談社学術文庫)第二次大戦に勝者なし〈下〉ウェデマイヤー回想録 (講談社学術文庫)
(1997/07)
アルバート・C. ウェデマイヤー

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