『中国の歴史』 第6巻 陳舜臣

見逃されがちな明朝をチェック

中国の歴史(六) (講談社文庫―中国歴史シリーズ)中国の歴史(六) (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
(1991/03/07)
陳 舜臣

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歴史小説の大家が書く、中国五千年の通史。第5巻では、明の永楽帝から清の乾隆帝までを扱う
『小説十八史略』の範囲が神話時代から南宋滅亡までなので、その後を押さえようと購入し積読になっていた(苦笑)
十八史略とは調子が違い、小説仕立てで面白い話を盛り込むのではなく、考証から妥当なところを探る書き方であり、文体は「ですます調」で純粋に中国史を紹介していく
士大夫の書く史書から立ち上げるので、宦官に辛口なところはあるものの、結果から凡夫、悪党と見なされた人々の業績、経緯を洗いなおして、失敗の原因を鮮明にする
明のラストエンペラー崇禎帝が暗愚というより頑張りすぎた独裁者で、簒奪者とされる李自成に新王朝の創始者になるチャンスがあった、という評価には驚いた

というと、華やかな唐・宋、グローバリゼーションを実現した元朝より、地味で停滞したイメージがあるが、本書で読むとそうでもない
永楽帝の世界帝国志向は鄭和の死によって終わるが、文化面では『四書大全』などが地方に配られ、官学である朱子学が浸透して科挙試験が全国化したし、王陽明によって陽明学(向こうでは王学)が生み出されて日本史にも大きな影響を与えた
『蒼穹の昴』乾隆帝とジョゼッペ・カスティリオーネの交流が描かれているが、1582年(万暦九年)にイエズス会が明朝に訪れていて、ポルトガルからは大砲を導入して満州族を苦しめていた
科挙の八股文といい、清朝は明朝の遺産のほとんどを引き継いで成立している

清朝に関しては、征服王朝としての性質を強調しやや辛口になる
作家という職業上、康熙帝から乾隆帝までにいたる表現の規制、弾圧には、断じてノーと言わざる得ないのだろう
康熙帝の『康煕字典』、乾隆帝の『四庫全書』には、清朝を明朝の後継者として正当化する狙いがあり、同時期に文字の獄と呼ばれる大弾圧があって多くの文人が投獄、死罪となった
「清濁」という言葉は詩の韻の都合で「濁清」としたら捕まったという事例もあり、単に政治的事情だけでなしに、下手に漢人の文化を知ってしまったばかりの劣等感の裏返しように思える
全盛期と呼ばれる乾隆帝に対してはボロクソで、遠征の成功は先代までのお膳立てがあってのことであり、ジュンガル遠征に際し『蒼穹の昴』にもでてきた将軍兆恵が部族を虐殺したことを紹介している
人物本位ではあるものの、全盛期の裏に紛れる罪、衰退期に隠れた功を取り上げる大著である


次巻 『中国の歴史』 第7巻
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