『山本七平の武田信玄論―乱世の帝王学』 山本七平

これを読むと、中井貴一の武田信玄に納得がいく

山本七平の武田信玄論―乱世の帝王学 (角川oneテーマ21)山本七平の武田信玄論―乱世の帝王学 (角川oneテーマ21)
(2006/12)
山本 七平

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『日本人とユダヤ人』『「空気」の研究』で有名な山本七平による武田信玄論
著者の業績から日本人論をとか、タイトルから自己啓発的なものを期待すると肩透かしを食う。本書は『甲陽軍鑑』などをもとに純粋に武田信玄の業績や人となりを探究するもの
初出が1988年で『甲陽軍鑑』を高坂政信が書いた前提で分析するなど(一説として小幡景憲を上げているが)、北条早雲を出自の怪しい人としたりと、最新の研究からはオヤというところはある
しかし、こと主題の武田信玄と武田家に関しては、実際の武田騎馬軍団がどうだったのか、など自身の体験や当時の治水・土木技術などの点から検証しなおされていて説得力がある
今となってはイメージどおりの信玄像かもしれないが、英雄の基礎知識を押さえる本として悪くない

サブタイトルに“乱世の帝王学”とありながら、この本には自己啓発的なところはあまりない。こうしましょう、というより、エピソードから信玄の人柄を偲ぶ調子だ
そのなかでも使えそうなのが『甲陽軍鑑末書結要本』にある「大身小身共に人を見そこのう邪道七ッの事」だ。他人を勘違いするパターンが列挙されている。少々長いが面白いから全部引用しよう

一、うっかりしている人を、落ちついた人だと見損ないがちだ。
一、軽率な者を、すばいしこい人と見そこなう。
一、ぐずな人を、沈着な人と見そこなう。
一、そそっかしくて、早合点にあわてる人を敏捷な人と見そこなう。こうした人物は大事が起こると必ずあわてふためくものだ。
一、ものの分からぬ人は、道理がわからないので、はっきりとものを言わないが、それを慎重な人と見そこなう。
一、何の思慮もなくものを言う人は、口叩きと称して、何の役にも立たぬ者だが、それを利発者と見そこなう。
一、信念のない者は知りもせぬことを作りごとをして、意外に強情を言いはるが、それを固い信念を持った負けず嫌いの人物と見そこなう。

これは経営者の人使いだけでなく、普通の人付き合いや選挙で政治家を選ぶ際などにも起こりがちな誤りだと思う。時事ネタで言えば、殴るコーチを熱心な指導者と見そこなうとか(苦笑)

武田騎馬軍団が講談の産物だということは通説になっているけど、本書ではそれを実証的に検証している
著者は太平洋戦争で馬を輸送に使った経験から、馬が騎馬武者を背負って動ける時間は限られており、小数の騎馬を撹乱に使うことはあっても基本は降りて戦っていたはずとする。馬の消耗を考えると騎乗する人間の数倍の軍馬を扱わねばならず、大規模な部隊編成は不可能だ
ただ甲信地方が馬産地として有名だったのは確かで、それは荷駄隊の運用には大きく寄与し、武田騎馬軍団の伝説はこうした補給体制の強さから素早く部隊を展開できたことから生まれたと推測する
また、山がちな甲信地方が貧しいというのは近世以降のイメージで、戦国時代の土木技術では大きな川が湾曲する平野部の治水が困難であり、山国でも石高では劣っていなかったとする
斬新さはないかもしれないが、しっかりと足元を固めた視点はさすが


甲陽軍鑑 (ちくま学芸文庫)甲陽軍鑑 (ちくま学芸文庫)
(2006/12)
佐藤 正英

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