『検索バカ』 藤原智美

Bクラスの下位打線ぐらいのアベレージ

検索バカ (朝日新書)検索バカ (朝日新書)
(2008/10/10)
藤原 智美

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最後まで読むと、それほど悪くはなかった
まずタイトルに偽りがあって、ネット社会の「検索」については最初の一章だけ。その後は「クウキ」の話が延々と続き、最後に「検索」と「クウキ」を結びつけて、現代社会の風潮に警告するという結びになっている
書籍のタイトルをつける権利は出版社にあるそうで、サブタイトルで内容をフォローするぐらいのことはしていただきたい
本書の特徴は著者が芥川賞作家で、自分の直感や経験を重視している
この本のためにいろいろ調べられたそうだが、そこから具体的な統計、資料などは出てこず、個人の印象・体験を根拠に論が展開されているのだ
そのために、提示される例に対して容易に反論を立てることができるだろう
この本は社会を批評的に見たものというより、作家の作品として読むべき代物だ

かなりぎこちない構成で、過激な事件で世相を探るとか通俗的手順を踏むものの、作者が全体として語っていることの根本はそれほど間違えていないと思う
ネットの情報の海に翻弄されて、ついつい「検索」することが「思考」したことだと勘違いする。あまりに簡単に情報を引き出せるゆえに、それを持って短絡的に答えを求めてしまう
かつて「世間」が存在していた時代には、共同体の「空気」によって各人の行動が決定づけられていたが、「世間」が消失した現代ではぼうと漂う「クウキ」が人間を拘束する
ニュアンスとしては分かる
「世間」の相互監視のもとで品性のある人間のように行動していたのに、監視の目がなくなった途端にダメ人間の行動をとるのは「モラルがなくなった」からではなく、「世間」という裏づけがなくなったためだという指摘は鋭い

ただ、ネット社会が思考停止に作用しているかというと、必ずしもそうではない
検索した時に出る「ランキング」が世の中を動かすということは消費社会とマスコミができたときからあるわけで、人気が人気を呼ぶという現象は以前から起きていた
むしろネット社会ができたことで、そのランキングがいかに作られるかという仕組みにも目が届き、厳しく査定されるようにもなった。オリコンチャートに真に受ける者が何人いるかという話だ
「空気を読め」「KY」という流行語に関しても、「空気」の魔力が失われてきたからこそネタ的に飛び出したことで、「空気」が通用する共同体がかなり限られてきたことを示していると思う
作者は主義者ではなくこういうことにも留意していることはうかがえる。ならば、もう少し打率の高い作品にして頂きたかったかな


関連記事 『「空気」の研究』

本書では山本七平の「空気」を意思決定の過程に働くものと限定していたが、もっと広汎な範囲に関係してくるものだと思う
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