『ローマ人の物語 17 悪名高き皇帝たち(一)』

いつも長文垂れ流し気味なので、文庫一巻ずつ行きます

ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫)ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫)
(2005/08)
塩野 七生

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『悪名高き皇帝たち』はアウグストゥスを継いだ皇帝たちの治世を描く
ティベリウスカリグラクラウディウスネロの四人だが、どれも同時代や次世代の知識人たちに評判が悪かったらしい。その実際のところはどうだったか、がメインテーマ
一巻目は第二代皇帝ティベリウスの前中盤が範囲。ティベリウスは誤解されやすい人だったらしい。彼の不評な原因の一つが、緊縮財政。アウグストゥスが人気取りのために行わざる得なかった、新規の公共事業を大幅に減らし、剣闘士試合の後援も止めてしまう。軍人生活が長かったせいか、政治センスに鈍いところがあり、自分の政策が人身にどういう影響を及ぼすのか、あまり計算していなかったようなのだ
冷静に政治実績を振り返ると、先代の体制を引き継ぎつつそれに「手直し」を施してより盤石なものにした守成の名君」といえる
が、治世の後半に入ると、言い訳の聞かない、大人げないことをしでかしてしまうのである。それは次巻で明らかに

ティベリウスにはなかなか複雑な背景がある。まず、アウグストゥスから「中継ぎ」の皇帝と見られていたこと。初代皇帝は自らの直系の血筋が皇統を継ぐことにこだわっていた。そのため、孫のアグリッピーナと結婚していたゲルマニクスを三代目に想定し、遺産の分配もしている
ゲルマニクスはティベリウスの弟ドゥルーススの子で、ティベリウスから見て甥にあたる。ガリアの軍団を母体に非常に人気を博した人物で、地味なティベリウスとは対照的な存在だ。そのゲルマニクスが不慮の死を遂げた結果、市民の疑惑とアグリッピーナの憎悪を背負うことになる・・・
アウグストゥスから指名されたはずのティベリウスには、自らの正統性に引け目があったようだ

また、彼は名門クラウディウス家の出。ローマ発祥の頃から有力者の家系で、元老院を基盤とする共和制ローマを支えてきた。一家の伝統として、共和制こそがローマである考えが染みついている
その一方で、カエサル-アウグストゥスの帝政路線が、今のローマでは現実的であるという判断を持つ。そんな彼自身が「第一人者」という名の皇帝を勤めるのは、ずいぶん複雑だったろう
その二重の引け目のためか、治世前半の彼は周囲に「インペラトール(=皇帝)」とは呼ばせず、市民の「第一人者」であるスタイルにこだわる。なるべく元老院に権限を持たせるため、わざわざ個別事案ごとの委員会制度を整えさせているし、そうした職務を面倒くさがる議員たちには何度も苦言している
こうした彼の行動は、元老院議員たちに理解されず、逆に不人気の原因になったようだ
とにかくローマでの職務はかなりのストレスだった。そのせいで、彼は周囲が度肝を抜く決断をする・・・


カエサル萌えが収まって、だいぶ冷静な筆致。ティベリウスの別荘があったカプリ島まで取材に行き、彼の心境を想像するところはさすが
ただ、同性のダメなところに過剰に反応しちゃうのか、女性の評価が辛い
たしかにゲルマニクスの未亡人アグリッピーナはファーストレディ失格な人物である。が、養子という形であれユリウス一門の家長になってしまったティベリウスにも彼女との一件を収拾する責任があったと思うが・・・
「だから女は・・・」とか「女は・・・である」という、言いまわしが多くなんとも男性的。向こうの古典を読みすぎて男視点が染みついてしまったのだろうか。世代的なものもあるかな

次巻 『ローマ人の物語 18 悪名高き皇帝たち(二)』
前巻 『ローマ人の物語 14~16 パックス・ロマーナ』
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