『小栗上野介-忘れられた悲劇の幕臣』 村上泰賢

徳川埋蔵金を埋めた人らしいけど

小栗上野介-忘れられた悲劇の幕臣 (平凡社新書)小栗上野介-忘れられた悲劇の幕臣 (平凡社新書)
(2010/12/16)
村上 泰賢

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幕府の旗本の立場から日本の近代化に貢献しなががら、罪無くして死んだ小栗上野介の生涯
著者は小栗上野介の菩提のある東善寺の住職で、本書は官軍から「奸物」と見なされ処断された幕臣の名誉回復をはかるものながら、少し力点がずれている
調べているうちにネタが膨らんでしまったのか、紙数の半分が通商条約批准を目的とした安政の遣米使節団に割かれているのだ(苦笑)
使節団は直に見たアメリカの技術文化に圧倒され、外国の文明を学び取り入れる決意を新たにする。後の岩倉使節団が受けた衝撃を旗本たちも受けていた
小栗は黒船以前からの交易論者、安積艮斎の薫陶を受け、外遊の体験からラディカルに日本の近代化を目指していく

薩長側を主役した小説では、小栗上野介はフランスからの借款で洋式軍隊を作り官軍と戦う売国奴として扱われることも多い。極端なものでは、フランスの勧めに従って徳川家将軍を「皇帝」に仕立てあげ、天皇制を廃せんとする奸臣とまで言われる
本書で描かれる小栗からは、そうした姿は見えてこない。横須賀に日本発となる本格的な造船所を造る時には

 このころ、ある幕臣が「幕府の運命もなかなか難しい。費用をかけて造船所を造ってもできあがるころには幕府はどうなるかもわからない」と語ったところ、小栗は居ずまいを正し「幕府の運命に限りがあるとも、日本の運命には限りがない。幕府のしたことが長く日本のためとなって徳川のした仕事が成功したのだと後に言われれば徳川の名誉ではないか。国の利益ではないか」(p129)

徳川慶喜など維新後に汚名返上のため事実と違う立志伝が創られることもあるので、そのまま鵜呑みはできないにしても、小栗の行動に主義者めいたものはない
旗本として徳川家を支える側に回っただけであって、それは維新後に政府へ参画した他の幕臣となんら変わるところはない
小栗は鳥羽伏見の戦いを誘引した西郷の江戸攪乱工作を止めるために、薩摩藩江戸藩邸を焼きはらうことに進言したと言われ、単にその煽りから粛清の白羽の矢が立ったものと思われる
慶喜の意志に従って官軍に抵抗せずに捕まっており、どうせなら大鳥圭介ばりに粘った方が良かったのかも

本書ではドロドロした政治の舞台裏については余り触れず、小栗の業績を「ですます調」で丁寧に振り返っていく
その働きには横須賀造船所のように実ったものもあれば、時代の波に翻弄されて立ち消えたものもある
小栗は遣米使節団において、日米通貨の比較分析する任務を負っていた。当時、日本と外国では金銀の取り扱い方が違い、4メキシコドル(銀貨)→一分(銀貨)12枚→一両(金貨)三枚→12メキシコドルとなる事態が起きていた
これを是正するために、小栗は現地でドル金貨の成分を分析させ、レートが実態から離れていることを立証している
ただ、これはアメリカの国益を左右するとして通らず、日本側が一両小判の含有量を下げることで対応したようだ
日露戦争後、東郷平八郎は小栗の遺族を招き、「日本海海戦に勝利できたのは、小栗上野介殿が横須賀造船所を建ててくれたおかげ」と謝辞を送った
その業績のひとつひとつは小栗がいなくても誰かがやれた仕事かもしれないが、そのことごとくが維新後の行政の先鞭となっていて、その前例が後押しことは確かなのだ


小栗上野介 日本の近代化を仕掛けた男 小説 (集英社文庫)小栗上野介 日本の近代化を仕掛けた男 小説 (集英社文庫)
(2006/08/18)
童門 冬二

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うむ。横須賀造船所であたふたしているところをみると、埋蔵金はガセのようだな
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