『花神』 下巻 司馬遼太郎

「花神」とは花咲爺さんの中国での名称というか、元ネタ
蔵六さんは花ではなく、爺さんの方だったんだ

花神 (下巻) (新潮文庫)花神 (下巻) (新潮文庫)
(1976/08)
司馬 遼太郎

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長州征伐を乗り切った時、武士の時代は終わった。朝敵とされた長州が京に上ると、大政奉還、王政復古、鳥羽伏見の戦い、と怒濤のように歴史は旋回していく。村田蔵六も戊辰戦争の指揮を執るために江戸へおもむき、彰義隊討伐に乗り出す

分厚いが、村田蔵六の部分は少なかった(苦笑)
鳥羽伏見の戦いでは薩摩の軍兵に長州が気を遣い、蔵六は一線から退いていた。江戸に官軍が入るまでは西郷が東征軍の参謀という形で実権を握っていたようだ
蔵六が表舞台に戻るのは、戊辰戦争が難航し彰義隊の始末が問題になってからで、それも司令官という身分ではない
「軍防事務局判事」という軍政上の身分で、西郷と上下関係がはっきりしない状態だったようだ(wikiによると、「東征大総督府補佐」という肩書きもついていたようだが)
しかし、西郷が譲る形で蔵六が官軍の指揮権を確立し、戦費の工面や江戸の治安、各戦線の兵力配分など後方から戊辰戦争を指導することができた
蔵六の役目は立志伝の主役にしては華がなさすぎる。けれど、この華のなさが英雄を生まない近代戦の達人たるに相応しい

村田蔵六を読み取るのに、司馬はだいぶ苦労しているようだ
士族軍から近代軍への改革者として捉え、反動派からの憎悪で死を招いたともって行きたいのに、蔵六にはそれですまないところがある
彼は宇和島藩から上士待遇と禄をもらい、幕府の講武所教授の地位も得、幕臣に取り立てられる立場にあった
しかし、合理主義者なはずの彼はその地位を蹴り、長州では中間同然の俸禄で仕えてしまうのである
司馬もその理由に郷土愛を上げ、また長州が熱烈な攘夷主義であったことも含めざる得なかった
そして、福沢諭吉のような開明なだけでは革命は起こせず、ドロドロした情念を持った者でなければ維新はなしえないと第2巻では書いている
この近代主義と攘夷との間を小説の中では接着しきれていないように思えた
ここは開明と攘夷を対立項で考えず、当時の日本人にとって攘夷はベースで、そのために西洋文明をどこまで取り入れるかで対立したと考えた方が分かりやすいか

唯一の近代戦の理解者、テクノラートとして官軍を指揮した蔵六の物語はたいそう地味だが(一番思い浮かぶのが豆腐なのである!)、管理人にとっては特別な意味をあった
当方は宇治市民で、ここには黄檗や大久保に自衛隊の駐屯地がある。どうもその由来が、大村益次郎こと村田蔵六が西郷の反乱に備えて、宇治に火薬庫を築いたことのようなのだ
火薬庫が置かれた場所は京大の分校になっているようだが、すぐ隣には陸上自衛隊の駐屯地になっている
宇治生まれではないのだけど、百数十年前の出来事と現在との結合点を見られて掛け値なしに感動させてもらった


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