『「気」の不思議―その源流をさかのぼる』 池上正治

映画『LOVERS』のクライマックス
チャン・ツィイー演じるヒロインが蘇るシーンに、チャン・イーモウ監督はこう答えたという
「気功だ!」

「気」の不思議―その源流をさかのぼる (講談社現代新書)「気」の不思議―その源流をさかのぼる (講談社現代新書)
(1991/06)
池上 正治

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古代から伝えられ、今なお神秘の魅力を持つ「気」。現代中国で行なわれている「気」の活用と、神話の時代から近代まで「気」はどう扱われてきたかを追う
サブカルチャーの世界で大活躍する「」の概念が、実際にはどういったものか知りたくて読んでみた
本書は、最初の2章で現在の中国(1990年代まで)における気功の研究と科学的取り組みを紹介し、三章以降で黄帝・神農らの神話から儒教や道教などでの「気」の世界観と変遷を取り上げている
少し厄介だったのは、テーマや狙いが散漫なことで、文章がどこに向うか分からず読みづらかった。文章は端的で分かりやすいのに、方向性が分かりにくいのだ
前半にある現代での取り組みを最終章でまとめた方が、すっきりしたかもしれない
そういう点を除けば中国の思想史として非常に面白いので、「不思議」な蘊蓄本として悪くないと思う。なにせい「気」がテーマだから捉え所がないのも仕方ないか

本書で分かるのは、「気」とは一つの科学であり思想であり世界観であるということ
東アジアでは近代まで最新の科学思想として通用していたものであって、だからこそ西洋科学が広まった現代でも一定の地位を占めている
例えば世界三大発明の一つ、羅針盤

 司南車とは、司南(指南)をつんだ車である。司南は、司南と地盤の二つの部分からなる。地盤は正方形の石の板をきれいにみがき、十干・十二支、四維という計二十四の方向を刻んである。その上におくことになる司南は、自然の黒い磁石(磁鉄鉱、主成分は四三化鉄)を加工したスプーン上のもので、柄の部分がやや長い。この司南を底を支点として、地盤のうえに立たせることができ、不倒翁(おきあがりこぶし)に似る。(p105)

この司南車が羅針盤=コンパスの起源と言われ、伝説の三皇五帝の一人黄帝が軍用に使い出したという。司南車の記述は、戦国時代の『韓非子』などにも見られる
司南を作るには、磁鉄鉱を加工する技術が必要で、少なくとも殷代には確立されていたらしい
北ではなく、南を探す指南車だが、その作用は磁“気”の賜物であるわけで
日本人に親しみのある言葉、ツボも、もとは古代中国医学の専門用語で、主に気の発生するポイントを呼ぶ
気も血のように体内を循環すると考えられ、その幹線を「経脈」、経脈から分かれた支線のことを「絡脈」と呼び、両方を一緒に経絡という。ほらみろ、もう北斗神拳だぞ

「気」の概念の面白いのは、一つの宗教がその価値を占有しなかったことだろう
儒教においては孔孟の代には「気」についての記述が多かったが、漢代に体制の学となって後は訓詁学が主流となり神秘性を失うが、道教がそれを補完するように大衆の多神教へ発展させた
仏教は「気」を軽視したそうだが、それはインドのヨーガに同じような概念があったためらしい
儒教の世界観を更新したのが、十二世紀の宋学=朱子学で、「理」を最高概念、万物の根本に置き、「気」は「理」の産物として設定しなおし陰陽五行説をも包括した。著者はこの「気の哲学」が完成していく過程を、「生命力を感じさせなくなる」と評するが
ちなみに日本はというと、唐代に空海が密教を生の形で直輸入し、江戸時代には貝原益軒白隠禅師により何故かこれも原型に近い形で伝えられている。もちろん、体制の学、朱子学も伝わっていたが、山鹿素行に始まるという、原書にこだわる「古学」の一派があった
著者の解釈では、「気」が生のまま受容れられたのは、日本人の情緒を重んじる価値観にあるとか

最初の気功研究に関しては、向こうの研究成果をとりあえず信じるという姿勢であり、信憑性に欠ける部分もあるが、中盤以降の「気」の世界観、歴史的変遷については文句なく面白い
少々まとまりがなく飽食気味になってしまうけども、「気」は日本人に染みついてしまった概念であり、どこを切り取っても関係してくるのだ。テニス漫画にまで導入されるのだから(笑)
尖閣を巡る騒動が収まらない昨今、「気」から日中の関わりを振り返ってもいいのでは


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