『屍鬼』 第5巻 小野不由美

金本に続き城島健司が引退した
この人が正捕手として定着できなかったのが、阪神にとっては大きな傷手、低迷の要因となった
残念

屍鬼〈5〉 (新潮文庫)屍鬼〈5〉 (新潮文庫)
(2002/02)
小野 不由美

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屍鬼の浸食に打つ手がないように思われた。静信は村の運命を悟り、沙子に身を委ね敏夫と袂を分かった。しかし、敏夫は起死回生の手を打ち、屍鬼の正体を衆人に晒すことに成功する。怒り狂った村人たちは手に手に凶器を持ち、白昼動けない屍鬼たちを逆に虐殺していく。村は血に染まり、灰燼に帰していく。この逆境に静信が取った行動は・・・

前巻まで人間側が押され続けていただけに、急転直下の逆襲となった
怪異に対するホラーから、かつて知った者同士が骨肉を争うシチュエーションへのホラーに転じていて、最後は「一番酷いのは人間だぜ」というゾンビ映画の王道にたどり着いている
人と鬼の戦いではなく、人と人、あるいは鬼と鬼の争いであり、屍鬼が人間に依存する食物連鎖の関係から、イデオロギーというより生存を賭けた凄惨な戦いに発展した
長丁場に適応した淡々とした描写ながらも、ここまでの修羅場に出会ったのは久しぶりだ。まさか木槌による原始的な肉弾戦が繰り広げられようとは・・・
小説は大火事から脱出する乗用車から始まったが、最終巻でそこに到るまでの出来事が奇麗に収束されている
登場人物のそれぞれが業を背負った物語だけに、色々と違和はあるものの、いいヤクザ映画を観たような読後感があった

シリーズを総括すると、『屍鬼』の物語から感じるのは、「村社会への怨念である
例えば、年ごろの少女である清水恵は都会に憧れを持ち、このままでは村に閉じこめられ続けるのでは、と悲観して屍鬼と接触を持ってしまった
屍鬼の現実にへこむものの、彼女は変貌することで村社会の因縁から離れることができた(この世から離れることにもなるが)
その彼女が惹かれた桐島家の人びとは、場違いな洋館に住み、東京を越えて海外のセレブ然とした存在だ。日本で妖怪というと土着で伝承の世界からやってくるが、屍鬼は外界から余所者としてやって来ている
作者の分身ともいえる、屍鬼の女王・沙子が行なおうとしたのは、「屍鬼の世界を築く=村社会を潰すこと」ではないだろうか。村落共同体の論理に潰されてきた乙女たちの復讐と考えるのは穿ちすぎだろうか(苦笑)
屍鬼は辰巳が告白するとおり、人間に依存した存在であり、数を増やすことはかえってリスクを高めてしまう。沙子の行動は理屈に合わず、別次元の衝動を背負っている
外場村の社会も形骸化している反面、屍鬼たちは飯のために人を襲うというシンプルな世界を生きている。人を襲えない屍鬼は侮蔑される、実力主義の世界であり、村社会に比べれば都会的でアメリカ的でさえある
宮部みゆきの解説には、この作品はスティーヴン・キングの『呪われた街』へのオマージュとあった
それが屍鬼のアメリカっぽさにつながっていて、日本的なうっとうしさをアメリカのシンプルさで打ち払う構図になっている

傑作というべき長編小説なのだが、やや難があるのは「屍鬼」そのものに魅力が乏しいこと
血液を主体にして人間の体を乗っ取るのに、「脈がない」「心臓の鼓動がない」。なぜか体は腐らないが、血液が流れないので色々困ったことが出てくる
ぶっちゃけ、性的能力はどうなるという問題(!)があるし、屍鬼の身体に性的魅力を感じるかということも大事な問題だ
吸血鬼というと、伝統的に異性を誘惑するものであり、官能美ゆえに怪物界のスターであるのだ
意識は生きているけど体は死んだも同然では、貧乏くじもいいところなのだ。「屍鬼」になったらなったで楽しいかもしれん、と思わせる描写が欲しい(笑)
これはストーリー上も大事な要素で、辰巳や静信が沙子を特別に考えるには「女の子として可愛い」と感じなければならず、そういう色恋の部分をはっきり書いてもらいたかった
屍鬼が倒した人間が必ずしも屍鬼とならず、ただの殺人に終わってしまうことも、屍鬼が人間にとって絶対悪であることを担保しているし、色んな意味でパンツを脱ぎきっていない
またソフトな仏教徒からすると、静信が屍鬼の実存を受容れるところがドライ過ぎて、一神教の神話を題材にした小説がああ短兵急に締められるのもハシゴを外された気がした。すこし元ネタに引きずられ過ぎではなかったか
とまあ、あれこれ突っ込んでしまうのも、あれだけの修羅場を見せてくれたからこそ。記憶に残る名作なのは間違いない



前巻 『屍鬼』 第4巻

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ジャンプスクエアで漫画化していたようで
原作者が「小説をなぞるだけにしないこと」と条件をつけたおかげで、オリジナルな展開をしているらしい
メディアミックスに原作者の理解があるかないかは、大事なポイントだ

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