『タイタス・クロウの帰還』 ブライアン・ラムレイ

納涼クトゥルー祭りのはずが

タイタス・クロウの帰還―タイタス・クロウ・サーガ (創元推理文庫)タイタス・クロウの帰還―タイタス・クロウ・サーガ (創元推理文庫)
(2008/11)
ブライアン ラムレイ

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「地を穿つ魔」を退治したタイタス・クロウとアンリ・ド・マリニーは、クトゥルー眷属の反撃に遭い行方不明となる。十年後にアンリ・ド・マリニーが瀕死の状態で発見された。マリニーは徐々に記憶を取り戻し、襲撃された時、古時計に入って脱出したことを思い出す。古時計は時空を旅する装置であり、タイタス・クロウはあらゆる時代、地球を越えて広大な宇宙を駆けめぐっていて・・・


いやいや、度肝を抜く展開だった
恐竜全盛期の白亜期やら、ローマ帝国時代のブリテンやら、人類滅亡後の地球・・・・・・果てはロボット生命体が暮らす異星にまで飛び出すのだから、もはや「モダン・ホラー」というカテゴリーはあてはまらない
タイタス・クロウは作中に人体改造を施され、「旧神」の加護を受けて常人を超える能力を身につけるのだから、めでたくヒロイック・ファンタジーとなってしまっている
解説によると、本書のもととなった作品が書かれたのは海軍士官をしていたアマチュア時代。もう30年も前の作品らしい
手記形式でプロットを説明する部分が多く、解説者が「プロット先行」と評するのも分かる
しかし、冒険の内容は非常にエネルギッシュで、古時計の設定をぞんぶんに生かし切っている

ラヴクラフトからクトゥルーを触った人間にとって、気になるのは「世界に対する解釈」
ヒロイックにクトゥルー眷属に立ち向かう同シリーズでは、旧神」は「クトゥルー眷属(CCD)」を封じ込めた存在で、はっきり“人類の味方”
そして、「旧神」と「クトゥルー」の関係は、キリスト教の神と堕天使の関係に近く、人類には「旧神」と「クトゥルー」の血が混じった者がいて相争っている
しかし、「旧神」と「クトゥルー」は本来同族であり、その血が混じった人類同士は実は近しい間柄である(全ての人類にどちらかの血が混じっているかどうかは分からない)
もっともこの解釈は公式というより、ブライアン・ラムレイの設定であり、違う作家となると「旧神」はキリスト教の絶対神をモデルにした冷酷無慈悲な存在で、「クトゥルー」はその抵抗勢力に過ぎないというブラックな設定もあるようだ

時空を旅する古時計でいろんな世界を旅するということで、本書では多次元世界の概念を取り入れている
クトゥルーの巨神たちは次元の違う閉ざされた空間に閉じこめられているし、タイタス・クロウは時間旅行している間は「時間世界」にいる
「旧神」「クトゥルー」は次元を超えて人間世界に影響を持つが、タイタス・クロウもまた次元を越えて移動できることで人間を越えた存在となっている
英雄が次元を越えて活躍するというと、思い出すのは「エルリック・サーガ」などマイケル・ムアコックの世界
SFから始まった概念をファンタジーに取り込むという手法の先駆者であり、同年代・同じイギリス出身で作者も影響を受けたに違いない


最後に「編者後記」の章で、衝撃の展開が記されている
次巻で今度はド・マリニーが古時計に乗って「旧神」の世界<エリシア>を目指すのだが、その間に地球上ではクトゥルー側が大反撃を行なうのだ
その被害は凄まじく、ウィルマース財団、ミスカトニック大学は多くの資料を失い、再起不能に。同シリーズでもタイタスとマリニーを援助してきた重要人物があっさり亡くなっていた
・・・・・・いや、これは小説として描くべき場面だろう(苦笑)。こんな大スペクタルを流すように済ませるなんて
そして、ここからどうやって地球の組織を建て直すのか、想像もつきません


次巻 『幻夢の時計』
前巻 『地を穿つ魔』
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