『ローマ人の物語 42 ローマ世界の終焉(中)』 塩野七生

五輪はいろいろ波乱が続いている
柔道ではビデオ判定で審判三人の判定が覆るという
なんでそんな審判を使ってしまうのやら

ローマ人の物語〈42〉ローマ世界の終焉〈中〉 (新潮文庫)ローマ人の物語〈42〉ローマ世界の終焉〈中〉 (新潮文庫)
(2011/08/28)
塩野 七生

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ホノリウスの治世末期から476年の西ローマ帝国滅亡まで
ホノリウスの治世では西ゴート族アラリックに「ローマ劫略」を許すなど帝国の権威は地に墜ちたが、コンスタンティウス将軍の働きと“蛮族同士の共食い”でローマ周辺は小康を得た
西ゴートに囚われた皇帝の妹ガッラ・プラチディアは講和で帰還し、コンスタンティウス将軍と結婚し、後の皇帝ヴァレンティニアヌス三世をもうけ、息子の治世前半では事実上の摂政となる
何やら再興できそうな情勢におもえるが、内外は“蛮族”がぎっしりで敵もゲルマンなら味方もゲルマンで、蛮族の真打ちフン族まで姿を現わしていた
明らかに主役は蛮族なのだ
本巻では「ローマ人の物語」でありながら、世界史の教科書では説明されない部分、諸民族がどういう経緯で大陸を横断していったか、を限られた文献と著者の想像力を交えて語られている
ヨーロッパ暗黒時代を照らす、貴重な一巻といえよう

帝国の体制は極度に弱体化し、もはや組織力でなんとかなる時代ではない
指導者の素養が興亡を分ける、まさに乱世である
そんなわけでこの巻では、ナナミンの人物鑑定が縦横無尽に行なわれる。結果から単純に判定している嫌いはあるが(苦笑)、文献の少ない時代であり、講談的想像力で埋め合わせずにはいられないところでもある
まず悲運のヒロインともいえる、ガッラ・プラチディアに対しては、二人の司令官ボニファティウスアエティウスを使いこなすどころか同士討ちさせて、貴重な軍事力を消耗したとしてボロンチョに叩く
それに対照させるように、東ローマの皇太后プルケリアを持ち上げ、東ローマ安定の要因に数える
東と西では君主制の基盤が違うので迂闊に比較はできないが、ガッラ・プラチディアの人格で蹴りをつけてしまうところ、善くも悪くもナナミン節である
世紀末覇者ともいえるフン族のアッティラに対しても、非常に厳しい
ローマ人以外の蛮族を統一すると吹いたわりに戦略がお粗末であり、こんな10年暴れた程度の奴が歴史上有名なのは、キリスト教徒が「神の鞭」と言い触らしたからでは、とする
このあたりは、ローマ人の視点、農耕民族の視点・価値観からの批評であって、遊牧民の基準からはやはり優れたリーダーではと思う
当時の遊牧民にとって、農耕民は収奪の対象であって統治の対象ではない。牧草地にならない土地に興味はないし、パンノニア(現・ハンガリー)の草原を確保したのは、立派な功績だろう

文庫では、本巻でローマは「滅亡」する
ナナミンの史観からすると、ローマ帝国とはローマという都市国家の延長で拡大した広域国家であり、ローマという都市へこだわらないローマ帝国はローマ帝国ではない
帝国という意味では、紀元410年の西ゴートによる「ローマ劫略」で属州への統治能力を失って滅亡しているが、ローマの都市機能が完全に失われてはいなかった
ホノリウス帝のもとローマの復興は着手され、減ったとはいえローマの市民と元老院は存在した。ヴァンダル族による「ローマ劫略」の後、476年に最後の皇帝ロムルス・アウグストゥスが退位し、ローマを代表するものが名実ともにいなくなったところでようやく「滅亡」と判定された
しかし、東ローマが西ローマよりローマ的でないと言い切れるだろうか
母后プルケリアは還暦を過ぎた元老院議員マルキアヌスと結婚し皇帝とすることで、フン族に対抗し国難を退けた。東ローマでは伝統がないために元老院は軍人の名誉職となっていて、マルキアヌスは実戦経験を持つ最高司令官としてことに当たった
本来、君主制が強く世襲と血統が重んじられそうなところ、軍人がインペラトールとして前に出て行くのはいかにもローマ的で、ボンボンが奥に引っ込んでいるアジアの宮廷イメージとは違う
むしろ、蛮族に金を払って潰し合いをさせる西ローマの方が、よほどアジア的ではないか。最近、流行の“中国化”という言葉をあてはめたくなるぐらい(南宋みたいでしょ)
東ローマ帝国は西ローマ滅亡後も千年続き、国難には武人肌の皇帝が先頭に立って中興してきた歴史があるので、それはそれで評価すべきだろう

生き残った帝国ビザンティン (講談社学術文庫 1866)生き残った帝国ビザンティン (講談社学術文庫 1866)
(2008/03/10)
井上 浩一

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次巻 『ローマ人の物語 43 ローマ世界の終焉(下)』
前巻 『ローマ人の物語 41 ローマ世界の終焉(上)』

2012’7/31 加筆・修正
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