『天 天和通りの快男児』 通夜編(第16~18巻) 福本伸行

1999年9月26日 享年53歳 赤木しげる 永眠・・・。

天-天和通りの快男児- 18 (近代麻雀コミックス)天-天和通りの快男児- 18 (近代麻雀コミックス)
(2002/04)
福本 伸行

商品詳細を見る


東西戦から九年後、会社員になっていたひろゆきはふと新聞の広告に気付く。そこには、赤木しげるの告別式が告知されていた。東北の式場まで足を運ぶと、式のあと何故か通夜が行なわれると知らされる。それを案内するのは・・・
ラスト3巻は麻雀マンガとしてはまったく異質のもの。なにしろ、麻雀は一切やらないのだから(僧我がミニゲームを持ち出すが)
当ブログらしくネタバレしてしまうと、アルツハイマーを患い自殺しようとするアカギに対し、東西戦の敵味方が説得するのが通夜編なのだ
それぞれのやり方で自殺を思いとどまらせようとするひろゆきたちに対し、アカギはその上を行く哲学を開陳し、ときには相手の生き方に疑問を投げかけ退けていく

みんな説得しようとするのだけど、澱んだ生き方をしている人間は説得の土俵にも上がれない
その典型が原田ひろゆきで、こっぴどく説教を浴びせられる
原田の生き方は、成功しすぎてその“成功”の成果に押しつぶされている人生。成功し続けたことでそれが義務化され、まるで幸せが感じられない
ヤクザの組長だからではないが、引退前の島田紳助を連想してしまった(笑)
何かのために成功を目指していたのに、成功そのものが目標になり息苦しくしてしまう。原田ほど成功し続ける人間は希だろうが、何のために事に取り組むのかを見失うと手段が目的化する罠は皆が陥る代物なのだ
人生にはその場の勝ち負けだけでなく、哲学が要る

ひろゆきの生き方は、失敗を意識しすぎて「まとも」な生き方をしようと窒息する人生
アカギを前にしても語る言葉を持たず、利発な彼はどこに行ったかという風情で、対話もそのまま人生相談である
しかし、そこで語られる会話というのは、社会に出た人間なら誰にも響くものだろう
ひろゆきはとりあえず会社員であり、いわゆる「負け組」ではない。望んだ仕事ではないにしろ、とりあえず職にありつけたという平均的な立場の人間
アカギのアドバイスも彼だからできる無茶振りで、ひろゆきの弁明もじゅうぶん同情できるものだ
けれども、今のひろゆきは輝いていない。この一点で、アカギの言うことは肯定できる
全ての人間が仕事に幸せを見出せる人間ではない。仕事と幸せをつなげる人間でも、原田のような不幸は訪れる
ひろゆきの選択は誰にも相応しいものではないものの、安い常識に縛られて“輝けない”、幸せを発散できないのならば、それも本末転倒であり、常識のほうに妥協していただくのも一つの凌ぎ方なのだ

死を手の内にいれることでアカギが聖人の位置にいるのが、良く分かる通夜編だった
ひろゆきへのアドバイスを、少しぐらい“天”に分けてやってもと思うぐらい、アカギ三昧である
健、金光は尺かネタの都合か瞬殺されていたが(笑)、末期ガンにかかった銀次とのやり取りは、作者の死生観が語られていて深いものがあった。「死とは万物が生まれる源に帰ること」という思想は、中島みゆきの歌詞を思い起こしてしまった(『小石のように』とか)
アカギの選択が正しいかどうかは非常に難しい
これほど惜しまれて自殺しちゃうのはヒドイと思う。一人の人間の死は一人の人間だけで完結せず、それだけに留まらず周囲の人間に悲しみを与える。アウトローのアカギにしても、これだけの戦友がいる
しかし、アカギの考えを原理主義的に断ち切ることはそれもまた、人間を損なってしまう。必ず生きねばならないと決められた人生が「生きている」と言えるのか
人間は自殺する権利を持ってもいいと思う。だけど、勝手に死んじゃいけないんだ


関連記事 『天 天和通りの快男児』 第15巻
       『天 天和通りの快男児』 第1巻~第3巻
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
カテゴリ
SF (22)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。