『原発・正力・CIA 機密文書で読む昭和裏面史』 有馬哲夫

なんか今年は適当に読み過ぎているな、と思って年頭の記事を見直したら、今年の目標は「積み読解消」「気まま」だった
ならこれでいいのか
積み読に関しては、新しい本棚に放り込んだので、文字どおりに「棚上げ」状態
下手にスペースができたので、新刊もかなり買いこんでしまったし、まさに本末転倒(苦笑)

原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)
(2008/02)
有馬 哲夫

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第5福竜丸事件で反原子力運動が高まる50年代、アメリカは巻き返しを期して親米世論を作るべく、CIAの工作を始めた。そのパートナーは読売新聞社主・正力松太郎。正力は総理の椅子とマイクロ通信網構想をかけて、原発導入に尽力するが・・・
本書はアメリカに公開された秘密文書をもとに、CIAと1950年代の日本政治との関わりを正力松太郎を中心に捉えたもの
正力松太郎警察官僚として警視庁警務部長にまで上りつめたものの、1924年虎ノ門事件の責任で懲戒。同年に弱小の讀賣新聞を買収し、プロ野球球団をもつなど辣腕を振るって1954年には200万部の大新聞に成長させた
また、日本のテレビ導入を後押しし、1952年には日本テレビを創設して、全国放送網を持つNHKと二分する勢力を誇った
そんな押しも押されぬメディア王が目指したのが、マイクロ波通信網による多重通信サーヴィスで、テレビ・ラジオから無線、長距離電話までを一手に抱え込む構想だった
そのためにアメリカの、CIAの援助を受けようとするが、向こうの戦略と噛み合わず、正力は自身の持つメディアの力を振るい駆け引きを続けることになる
本書に描かれる正力は、アメリカの狗ではなく超大国と取り引きする虎であり、彼の謀略が今の日本にも重大な影響を残したことからも、良くも悪くも昭和の怪物と言わざる得ない

正力はマイクロ構想の実現のために、総理大臣の地位を目指した
戦前に貴族院を経験したとはいえ、任期が少ない正力が総理になるには、政治的な成果が必要となる
その成果として選ばれたのが、「原子力の平和利用」である“原発導入だった
第5福竜丸事件以降、反原子力運動と反米世論が結びつき、原子力の平和攻勢をとりたいアメリカを悩ませていた。アメリカとしては、旧敵国の日本には原子力を渡したくないが、日本の基地に核戦力は配備したい
正力はその隙を突いて、讀賣グループを動員してアメリカの「原子力平和利用」キャンペーンを支援する。またCIAとの取り引きで、讀賣グループの記者5000人をそのインテリジェンスに動員することを約束していた
政治家としても、原子力委員長と共に初代科学技術庁長官に就任し、茨城県東海村に最初の原発予定地を選定する(バケツ臨界があった場所だ)
しかし、アメリカは原発の動力炉輸出を渋り、正力は業を煮やしてイギリスの動力炉購入に動き出すのだった

さて、実際に原発建設となると、発電所の運営を民間主体か、国家主体か、で揉めることになった
正力は全国の電力会社と財界の後押しで民間主体を自明とするが、電源開発株式会社とそれを後押しする河野一郎は国策会社の存続のために原発にクビを突っ込みたかった

 電源開発株式会社のほうは、原子力発電のような将来を左右するような技術は、国の資金を投入して、経済性や安全性を確認しながら少しずつ開発すべきだと主張した。
 これに対して九電力側は、次のように言い張った。電力は経済と産業の血液であり、一日でも早く原子力発電を始めて、これを増大させ、経済と産業に活力を与えなければならない。
・・・(p200)

もしこの時、国家主導の管理が決まっていたとしたら、フクシマは防げていただろうか。正力は派閥の領袖である河野一郎と対立したことで、総理の目を摘まれることになる
そして、イギリス型原子炉の導入を決めたことも裏目に出る。1957年10月イギリスのウィンズケールにある原子炉が事故を起こし、放射性物質が空中へ飛散したのだ
この結果、イギリス側はいっさい事故の賠償をしない「免責条項」を急遽差し込み、賠償責任の問題が発生した

・・・この条項が加わるからには、イギリスに代わって誰かが賠償責任を負わなければならない。その誰かとは当然事業者のはずだが、民間企業ではたとえ保険を掛けてとしても、原子力発電所の事故が引き起こす甚大な被害を賠償することはできない。これができるのは国しかない。(p216)

まさに日本の原子力問題の発端を正力が決していたのだ
運営が民間主体にも関わらず、被害の賠償だけは国が主体となる。1961年に成立した原子力損害賠償法において、50億円までは保険で事業者が賠償するが、それ以上は国が補填することが決まった
責任がとれない民間に運営を任せる体制。給料を上げながら使用料も上げる、電力会社の無責任さは、ここに原点があるのだ

原発・正力・CIAの次に言葉を連ねるなら、「ディズニー」が入る
ディズニーは原潜を開発したジェネラル・ダイミナックス社と関係が深く、同社と合衆国海軍の依頼で科学映画『我が友原子力を作っている
この映画は日本の反原子力運動対策にも動員され、1958年1月に日本テレビで放送された。そのつながりで、ディズニーランドの世界観を紹介する『ディズニーランド』もプロレス中継と交互で放送されたらしい
その後も讀賣グループとディズニーの関係は続き、東京ディズニーランドの建設で京成電鉄社長・川崎千春とディズニーを仲介したのは正力だったという
・・・と、ここまで陰に陽に「工作」があったとなると、今の日本はアメリカが仕組んだと陰謀論に嵌りそうだが、著者はそうは捉えない。アメリカの要求と戦略に、日本人なりに立ち向かい利用した上に現代があると考える
正力がアメリカに仕掛けた時代は、日本がまだ独立まもなくアメリカの援助が必要だった。それとともに、日本人が戦前からアメリカスキーだったことを加味して、戦後を振り返る必要があるだろう
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