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『不毛地帯』 第1巻 山崎豊子

私の経済状況のことか

不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))
(2009/03)
山崎 豊子

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日本独立後の1950年代、元大本営参謀の壱岐正は、再就職先として商社の近畿商事から声をかけられる。商事の社長大門は、国費を投じて育成された参謀としての能力を、国際展開する大組織の中で生かして欲しいと言う。軍人に民間企業が勤まるのか、逡巡しながら11年間のシベリア抑留を回想する

会社でぼちぼち読んでいて、一月かかってしまった。一冊600項もあって長いのだ
初版は4巻構成で文字が小さかったらしいが、新版で5巻構成に代わり文字が大きめになったようだ。おかげで作者の文章力もあいまって、かなり読みやすかった
壱岐正のモデルが瀬島龍三で、大本営参謀→シベリア抑留→近畿商事(伊藤忠商事)の経歴は確かにそのまま
ただし、シベリア抑留時代など細部の行動に関しては、他の人間から持ってきているようで、小柄で虚弱な壱岐がソ連に転向した民主委員に乱暴するなど急に人が変わったような箇所がある
作者とすれば、シベリア抑留の過酷さを壱岐という人物を通して伝えたかったのだろう

山崎豊子というと盗作裁判なんてこともあったから、どこまでが創作でどこまでが借用(!)かと気になってしまうのだが、この作品については、あまり借用がないように思う
登場人物の行動がかなりドラマ仕立てなのだ
シベリア抑留時の英雄的行動もしかり、壱岐が商社の仕事を説明されるところなど、映画かNHKのドラマのような演出、場面展開を見せる
序盤に1950年代現在からシベリアを回想し、その回想の中の自分が終戦時の満州を回想させるという離れ業(苦笑)もあって、回想から現実へスリリングに物語は動いていく
ノンフィクションではなく、史実の話を総合して作ったフィクションとして昭和の裏側を語っていると考えるべきだろう

壱岐正以外の人物にも目が向けられている
シベリアに抑留され東京裁判のソ連側証人として東京で自殺した秋津中将。その息子清輝はフィリピンでの仲間の多くを死なせたことを苦にして、出家し比叡山で厳しい修行に挑む
娘の千里は、男ばかりの陶器職人の世界に身を投じ、品評会への出品にまでこぎ着けた
戦争に関わった、またはねじ曲げられた人たちの群像劇であり、戦後を生きる一人一人が光彩を放っている


次巻 『不毛地帯』 第2巻

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