『日本仰天起源』 荒俣宏

『帝都物語』も『里見八犬伝』も触ったことがないのよね(映画は見たけども)

日本仰天起源 (荒俣宏コレクション) (集英社文庫)日本仰天起源 (荒俣宏コレクション) (集英社文庫)
(1994/09/20)
荒俣 宏

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天皇の起源、今に残る江戸時代の宗教的遺風釣りの呪術性、からは果てはトイレの歴史まで、日本の地層を根底から探ったコラム集
副題に「荒俣宏コレクション」とあるように、80~90年代にかけて様々な誌面に寄稿した文章を集めたもので、それぞれ現在に残る風物をその源まで追いかけている
入口はまったくのバラバラなのだが、その裏に眠る古代の呪術性を見出すことが共通している。現代人の心性にも、そうした古代の呪術的世界観が影響していることを教えてくれる

一番振るっているのは日本におけるトイレの歴史だ(笑)
衛生陶器大手のINAXによって出版された『日本トイレ博物誌』が初出で、雑誌でないせいか文章量がだんぜん多いのだ
洋式以前のトイレとして、屋外の“おまるの“樋殿屋内の“雪隠の三種類が紹介されている
“厠”は、糞便を河に流す屋外の様式で、不浄を跡形もなく流すものとしては一番古代の日本人の価値観にかなっていた
“樋殿”は、屋敷で暮らす際に屋外の“厠”が間に合わないことがあるため、一時的な溜め場として屋内に建てられた。貴人の糞便は専用の箱に入れられ、使用人が奇麗に落とした
“雪隠”は、禅僧が中国から持ち帰ったインドの習慣で、形態は“樋殿”に近いものだが、水で手を洗うなど現代に通じる衛生習慣を根づかせた
もっとも一般庶民は、こうした衛生施設を使える立場になく、川に流せない場合は路上で野糞が普通。平安時代までは裾に便がつかないための高足駄が唯一の排便道具だった言う
江戸時代に入るとそうした習慣も一変し、江戸や上方では公衆トイレが作られて立ちションを防ぐ工夫も編み出された
その原因は農耕技術の進歩により人便が堆肥として使えると判明したからで、長屋の大家は住民の排便を集めることで年30両もの収入を得るものもあったという

とにかくどこを切り取っても唸らされる蘊蓄がある
サブカル評論に関心のある人なら、里見八犬伝を解読した「八犬伝の妖と怪」は必読だろう。当時の主流だった儒教の価値観を仏教思想で取り囲んで相対化した、という解釈が面白く深い
馬琴が続編を作らせないために、仏教的な解決で物語を円満に(無常に?)終わらせたことは、名作マンガの結末を思い出させる
八犬伝はジャンプ漫画の源流なのだし、マンガの連載は雑誌が死なない程度に美しく終わってもらいたいもんだ

あと、本書の表現で気になったのは、「魔術」「マジカル」「マジシャン」という言葉遣いで、昭和天皇を「マジカル・エンペラー」と呼んだりしている。総じてべたな洋風なのである
これを「神主」「巫女」「祈祷」などと普通の表現ならば、通りが良すぎて当たり前のことのように感じるだろう。あえてオーバーな表現にして、隠された禁忌の匂いをうまく演出している
題材だけでなく、文章もそれに相応しく蠱惑的なのだ


日本トイレ博物誌 (第3空間選書)日本トイレ博物誌 (第3空間選書)
(1997/04)
阿木 香、伊奈 英次 他

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