『蚤と爆弾』 吉村昭

散髪屋で「似合うそうな髪型」と頼んだら、ソフトモヒカンになった
ヒャッハー!

蚤と爆弾 (文春文庫)蚤と爆弾 (文春文庫)
(1989/08)
吉村 昭

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関東軍で細菌兵器を研究した防疫給水部(731部隊)と、その指導者、曾根二郎(石井四郎)の実像を追う
人体実験で悪名高い731部隊は、石井四郎が率いたことから“石井部隊”と言われたが、この小説では石井の“い”の字も出てこない
731部隊は関東軍防疫給水部という正式名で記され、創設者は曾根二郎の名が与えられている
文中に書かれた曾根の経歴とwikiの石井四郎のを比べると、ぴたりと一致する。複数のモデルをあてはめたというより、曾根二郎=石井四郎と見ていい
題名『細菌』としての初版が1970年と、かの『悪魔の飽食』より10年以上前。石井四郎で押し通すには、資料が足りなかったのかもしれない
731部隊に関する米軍の資料が公開されたのも、2007年とごく最近であり、あくまで当時手に入る資料と証言を元にした“小説とした方が無難だろう

731部隊は今なお謎が多い。米軍の資料にすら、人体実験の確証が残っていないという
防疫給水部の表の目的は、文字どおり満州の地で飲料に耐える奇麗な水を確保することと、兵士の風土病を防ぐこと
飲料水については、曾根(石井)は画期的な濾過装置を開発し、ノモンハン事件において部隊に良質の水を供給できたとして、表彰を受けている(今読んでいる、ノモンハンの本でも石井四郎の写真が出て来た)
防疫に関しては、本作では凍傷の治療法を探すために人体実験を行なったとする。残酷非道な実験ながら簡単に解決方法が見つかったことで、曾根は味を占めたのではとしている
小説では細菌を伝播させるためにを集め、蚤に細菌を移すためにネズミを養育し、蚤を殺さずにばらまくために陶器爆弾を作るための、人体実験を交えたおぞましい研究が、冷静な筆致で克明に描かれていた
ドゥリットル中佐による最初の東京空襲への対抗作戦として、中国大陸の空港破壊が計画され、この浙贛作戦において細菌兵器が使用された。陶器爆弾は対米ソ用に温存され、井戸や捕虜への食料、置きみやげのビスケットなどに菌を植え込まれ、感染を広めたとしていた
はたしてどこまでが真実なのか。仮名を用いたことに確証を抱けないとするか、ノンフィクションの名手が取り上げたこと自体を信用するか。実証的にはともかくも、後者と考えたい

曾根は京都帝国大学(現・京大)出身であり、才能がありながら東大出が占める行政中枢からは爪弾きにされていた
その屈折した反感が細菌兵器への情熱につながり、同じく不遇な京大出の研究者を集めて、防疫給水部をして最新研究のメッカとすることに血道を上げさせることになった
小説は残虐な事象に距離を置きつつも、描写を積み重ねることで部隊の非道性を訴えるのだが、その一方で曾根の口から読者に対して「悪魔の真実」を告げる
GHQに誘われた曾根は言う。「盲腸を治すにも何百という犠牲の上で成り立っており、処刑の決まった諜報員を使うのなら人類のために使った方が良い。一殺多生だ」「戦争はお互いを殺戮するもので、細菌兵器が非人道的なら全ての兵器は非人道的。原爆を作ったアメリカに裁く資格はない」
人間を功利的に、道具として扱う曾根は明らかに間違っているが、その間違いは近代戦争を起こした人間全体も負っている
読み終わって慄然とさせられた
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