『昭和陸軍の軌跡 永田鉄山の構想とその分岐』 川田稔

なぜか、昨年より年末調整で戻ってくる額が下がっていてショック
静かなる増税なのか?

昭和陸軍の軌跡 - 永田鉄山の構想とその分岐 (中公新書)昭和陸軍の軌跡 - 永田鉄山の構想とその分岐 (中公新書)
(2011/12/17)
川田 稔

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予想される世界大戦に対して国家総動員体制を企画した永田鉄山と、「一夕会」に所属した彼の後継者たちの戦略を、満州事変から敗戦まで追う新書
HOIのMODにも登場する永田鉄山は、第一次大戦を研究し総力戦に耐えうる国防計画を追求した陸軍幹部
彼は国家総動員のための変革とそれを妨げる宇垣一成ら長州閥に対抗するために、非長州閥の中堅幕僚を集めた組織、「一夕会を立ち上げる
主要なメンバーは、太平洋戦争時の総理となる東条英機、張作霖爆殺を指揮した河本大作、満州事変の実行部隊を率いた板垣征四郎石原完爾、などいずれも世に名を知られる者たちばかりだった
満州事変後、陸軍の実権を握った永田は皇道派との対立の末、相沢事件(1935年8月12日)に惨殺される
しかし、彼の立てた計画は一夕会メンバーの間で生き、太平洋戦争開戦にも大きな影響を与えることになるのだ

一般に、軍部の独走で戦前の日本は無謀な戦争に突っ走った、とされるが、本書はその「軍部の独走」とは何かを具体的に追求していく
驚かされるのは、陸軍の中にも幾つものグループが存在し、とても一枚岩とは言えなかったことだ
政党政治を許容する山県有朋以来の長州閥に、同じ一夕会の中にも永田・東条・武藤章らの統制派荒木貞夫・真崎甚三郎らの皇道派、それとは別に2.26事件を引き起こす隊付け若手将校の国家改造グループがあった
既成の秩序の維持、総力戦の見地からの変革、国家社会主義による貧困の解決など、それぞれが違う価値観で政治に介入していく
永田らが巧みだったのは、満州事変の際に実戦部隊から後方の総司令部にまで広範なポストを事前に抑えたことだ。トップの制止を途中で無力化することで、事変を事後承認させてしまった
満州事変は単にどこかの部署が突っ走ったものではなく、用意周到な謀略だったのだ。陸軍の権力基盤を変える、事実上のクーデターといえるだろう
これ以後、永田中心の統制派が主導権を握り、その死後も敗戦まで実権を握り続ける

永田の総力戦計画は、国内の変革に留まらない、資源獲得の膨張主義を含んでいた
国防というものに対してたぶんに原理主義であり、外交ではイデオロギーや過去の経緯に縛られないマキャベリズムを主張しつつも、どの国が敵に回っても対応できる体制を理想とした
そのため、戦時に不足する資源を行なうために、大陸では満州・蒙古・華北、南方ではベトナム、インドシナの油田地帯までを日本の利益線とした
これは後の「大東亜共栄圏」の範囲とほぼ同じであり、共栄圏が日本の自存自立のためであったことを証明している
とはいうものの、これは日本が列強と戦争を行なうための体制作りのものであって、そのために英米ソと戦争状態に入ることがあってはならないとされていた
そして、最も驚愕すべき事実はそのことは、日中戦争を指導した武藤章、太平洋戦争の開戦総理となる東条英機にも共有されていたということだ

それにも関わらず、なぜ泥沼の戦争に入りこんだのか
著者の推測では、英米の要求に応えることが、華北・満州から退くことにつながり、「一夕会」の計画とそれに払った犠牲を否定することになるから、自らの立場で対米戦反対と言えなかったとする
果たしてこの発想は、軍人のものなのか。むしろ、官僚に思えてくる
体制の枠に囚われた官僚では、前例や前任者の計画を放棄するのは自身の立場を危うくする。実際、満州事変後に中国のナショナリズムを認めた石原完爾は日中戦争に反対するも、結局軍中央を追い出されている
官僚主導、テクノラートに頼った政治では、国の体制は立て直せない。本書は日本の陸軍を扱っているが、読み取るべきはこの教訓だと思う


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