『あ~ぁ、楽天イーグルス』 野村克也

ノムダスを読むのは久しぶりです

あ~ぁ、楽天イーグルス (角川oneテーマ21 A 110)あ~ぁ、楽天イーグルス (角川oneテーマ21 A 110)
(2009/12/15)
野村 克也

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本書が出版されたのは、野村監督が楽天を追われた2009年末で、冒頭から楽天球団に対するボヤキが炸裂する
タイトルが阪神タイガースのは「あぁ」だったのが、あ~ぁ」となっていることに万感の想いが込められているのだ
が、球団はともかく「選手、ファンには感謝」が本音。球団初のAクラス、リーグ二位の躍進をもたらした野球哲学、貢献した選手たちの成長ぶり球団経営への冷静な分析があって、ノムダス本としての質も高い
抽象的な話が少ない分、以前出された本と被るところが少なくて、新鮮に感じられた
ただ話のもって行き方が、スワローズが良くて対照的にタイガースが悪く、楽天は虎よりはマシという格好なので、虎ファンの管理人は苦笑いせざる得ない部分が多かった

虎ファンなので目に止まるのは、タイガーズのネタ

 もう時効だからはっきりいうが、当時の阪神では、目をつけていたAという選手がめでたく入団すれば、担当のスカウトに30万円のボーナスが支払われていた。安月給のスカウトにとって、その額はバカにならない。したがって、ボーナスを得るために、確実に入団することができる、いわば獲りやすい選手ばかりを指名するようになる。つまり、ほかのチームなら見向きしないような選手ばかりが入団することになるのである。
(中略)
「あいつら、何を考えているんだろう」
それくらい、ほかのチームのスカウトからも阪神のスカウティングはバカにされていたのである。(p40-41)

これはいちおう、スワローズの監督時代(1990~1997年)から阪神監督就任(1999年)までの話
この頃の阪神は1992年に発作的(!)に二位に浮上したものの、それ以降四位から最下位を彷徨う真の暗黒時代。ドラフトでも、あまり競合する有望選手を獲ろうとしなかった
入ったときだけ評判となり、消えていった選手が何人いたことか(ドラ1野手でモノになったのは今岡くらいか)
その原因はこんな馬鹿げた慣習だったのだ

そして、去年FA移籍してきた「男前」には

 私が楽天の監督になったとき、主にマスクをかぶっていたのは藤井彰人だった。彼はキャッチングの技術はすばらしい。一流だ。ところが、彼は鈍感なのである。
 キャッチャーに一番求められるのは、観察と洞察である。・・・(略)・・・そこが藤井には欠けていた。
 また、彼には責任感と使命感も足りなかった。なによりピッチャーの長所を引きだそうとする意欲に欠けていた。・・・・・・
 藤井もまた、近鉄の残党である。「勝つ」ことを軽視するチームで育った。そういう体質はかんたんには抜けない。そこで私はルーキーの嶋を鍛えることにしたのである。(p116)

城島の穴をしっかり補った「男前」にノムさんはどういう評価を下すだろう
今回の特徴のひとつが近鉄-エゴイスト論で、近鉄出身の選手は個人の成績を追いかける傾向があり、チームの雰囲気を乱したり貢献をしないというもの。西本幸雄監督が人間教育を怠ったからだとまで言う
何やら、昔の南海-近鉄の因縁を感じてしまうが、指導者として成功した出身選手が少ないのはたしかに事実か
西本さんに関しては、「鉄拳」を介した教育であったがゆえに、チームに哲学として残らなかったといえそうだけど

自分の部下たちの活躍をもって野村哲学の浸透とするので、そのあまりの手前味噌には微苦笑を禁じ得ない
それを許されるほどの実績と影響力を誇る人間であるのは間違いないが、だからこそ顕示欲を抑えればもっと良く見えるのにと思う
まあ、今なお講演と語録本で稼ぎまくる出しゃばり振りも含めて、ファンにはご愛敬かな
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