『翔ぶが如く』 第7巻 司馬遼太郎

今読んでいる『翔ぶが如く』は、もともと父のもの
1990年当時は、18刷ので400円
現在は、税込み570円なり。出版界にデフレなし・・・

翔ぶが如く〈7〉 (文春文庫)翔ぶが如く〈7〉 (文春文庫)
(2002/05)
司馬 遼太郎

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熊本、萩、秋月の反乱の後、大警視川路利良は鹿児島へ密偵を放った。密偵の行動が西郷暗殺の風聞をもたらし、薩摩士族は沸騰させた。明治十年二月六日、鹿児島私学校は決起を決める・・・

第7巻で焦点が当たるのは、警察庁の諜報作戦であり、薩人でありながら密偵となった郷士出身の男たち
川路利良は密偵たちに、郷士に対する上士たちの仕打ちを思い出せと吹き込む
当時の鹿児島県は、そのまま薩摩藩の領土と重なっていて、薩摩・大隅・日向(宮崎県)の旧三国を覆う。県令に島津久光の息のかかった大山綱良が配され、新政府の政令が行き届かぬ別天地であった
西郷が帰郷し私学校を建てた後もそれは変わらず、鎌倉時代から連綿と続く薩摩の士風が保存されたまま4割の士族を六割の農民が支えるという苛烈な身分社会が存続していた
川路は鹿児島の旧弊である身分制を指摘し、四民平等を唱える新政府の正義を彼らに植え付けたのだ。フランス革命の精神に共鳴した彼にとって、鹿児島との戦いは封建制へのイデオロギー闘争でもあった
しかし、鎖国の伝統をも受け継いでいた鹿児島側は、苦もなく密偵たちを捉え情勢は武力蜂起へと向っていく

西南戦争のきっかけとなったのが、鹿児島の弾薬庫を政府が移そうとしたことと、西郷暗殺の噂
弾薬の輸送は大村益次郎の時代から検討されつつ却下されたもので、あえてしたのは明らかに政府の鹿児島への挑発行為
しかし、これだけでは即暴発ともいかない。西郷暗殺の噂が政府側の攻撃姿勢を裏づけて、士族たちに火がついたものと見られる
本当に西郷の暗殺計画はあったのか、そこに司馬はこだわる
鹿児島側は、新政府の密偵・中原尚雄がその同志を装った鹿児島側の密偵(ややこしい)に西郷暗殺を語ったとした。取り調べで中原は否定するのだが、それでも「話し合ってダメなら、(西郷を)刺す覚悟」としている
司馬からすると、これは幕末の志士たちの常套句でイコール暗殺とは限らないと読む
また、鹿児島側の調書の取り方は、取り調べする側が書くという現代の警察と同じ方式であり、調書をとる側の解釈がそこに書き込まれる。大久保・川路に憎しに、私学校生が決めつけた可能性もある
県令の大山綱良は穏便に収めたかったようだが、そこにトドメを刺すような密告者が現れて事態は暗転してしまうのだった

果たして、大久保と川路は西郷の暗殺を本当に謀ったのだろうか
大久保の次男、牧野伸顕の証言では、蜂起の一報が入った時、西郷が担がれたことを信じず

「それが終に、公表に拠り、西郷も加担してゐると知つた時は、アノ背の高い(ほとんど六尺あった)父が、座にゐたたまらず、焦燥しながら、座敷と廊下の間を、鴨居に頭をぶつけながら、グルグル歩きまはつて、そして眼には一ぱい涙を湛へて居つたことは、後年、石原の叔母(大久保の妹)が、能く私共に話して聞かせたことである」(p257)

大河ドラマのイメージがあるから、西郷暗殺説は信じがたい。西郷が反乱に積極的に加担した場合とか、かなり限定された局面での非常策としか思えない
しかし、フーシェになぞらえる川路ならば、その手段を辞さないだろうか
ただまあ、前原一誠の時のように、政府側が挑発を続けていたわけであって、司馬の書くように大久保のこの反応はそらぞらしい気もする
幕末の全盛期のイメージで西郷自身は軽々しく乗らないと信じていたのか

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