『ローマ人の物語 8~10 ユリウス・カエサル ルビコン以前』

ついに欧州で「皇帝」の代名詞となったユリウス・カエサル登場。
文庫本上巻では、彼の少年期から政治生活を始める青年期を扱う。若者の頃のカエサルは、好青年ながら遊蕩にふける遊び人としか知られていない
内容の多くは、前巻の『勝者の混迷』で扱っていた範囲と被る。著者は彼が出現する前の時代から扱わねば、その存在意義が分からないということだが、続けて読んでいる人間には関係ない話だ。どうしてもカエサルで単行本二巻を確保したかった営業的思惑が見えてしまう

ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)ローマ人の物語8 (新潮文庫)ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)ローマ人の物語8 (新潮文庫)
(2004/08/30)
塩野 七生

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ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)ローマ人の物語9 (新潮文庫)ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)ローマ人の物語9 (新潮文庫)
(2004/08/30)
塩野 七生

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ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)ローマ人の物語10 (新潮文庫)ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)ローマ人の物語10 (新潮文庫)
(2004/08/30)
塩野 七生

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上巻半ばから中巻始めにようやくカエサルは政治の表舞台に登る。役職を生かして公共事業剣闘士試合の二本立てで、平民階級に人気を浸透させる。その人気を利用し、軍人ポンペイウスと騎士階級クラッススの大物二人を引き込んで「三頭政治」を持ちかける
どうやってポンペイウスとクラッススと接触していたかは謎らしい。ただ、クラッススはカエサルの多額の遊興費を賄い、スポンサーになっていたようだ。どうしてクラッススがカエサルに傾倒したかは本書でも謎としている。ここらへんの不明確なところにこそ、ナナミンの想像力を発揮してもらいたいのだが・・・
カエサルはポンペイウスとクラッススの力を背景に、グラックス兄弟悲願の「土地改革」法案を市民集会で通す。元老院よりの修正をしつつも、法案の実と平民の人気を勝ち取る。「政治家」カエサルの鮮やかな手腕である

「三頭政治」と言っても、カエサルの取り柄は今のところ平民人気。ローマを牛耳るには軍事的成功が不可欠だ。その契機になるのが、有名なガリア遠征。中巻~下巻の内容はカエサル自身が記した『ガリア戦記』を頻繁に引用し、塩野版『ガリア戦記』といったところ
ローマ軍団の質が高いとはいえ、遙かに多いガリア人のまっただ中に飛び込み、向かってくる敵を次々に打ち倒していくところは痛快
何もカエサルはガリア人を力で征服していったわけではない。ゲルマン人に押し出され侵入してくる彼らを、ローマの「同盟者」とし先々はローマ化させて安定させることが目的だ。そのため、ライン川を越えてゲルマニアにも遠征。ガリア人を攻撃したゲルマン人を牽制している
とはいえ、ローマ軍団の長居はガリア人の疑心を招き、英雄ヴェルチンジェトリクス(ウェルキンゲトリクス)の大蜂起を招く。カエサルはこのピンチをどう乗り切るのか。アレシアの戦いの描写は、本書の山場にふさわしい迫力だ


意外だったのは、カエサルが大スキピオとポンペイウスとは違い遅咲きの天才だったこと。40になるまでは、人気とりに精を出す「政治屋」にしか見えない
しかし、一躍ガリア遠征の司令官になるや、ガリア人やゲルマン人をちぎっては投げ、ちぎっては投げの大活躍。マリウスのように叩き上げの軍人でも、スッラやポンペイウスのように若くして激戦の経験を積んでいないのに、この大戦果である。もともとあった才気に、長い下積みと遊蕩生活が人物に幅を広げ、ここで大輪の花を咲かしたといったところか
ポンペイウスもさぞびっくりしたろう
カエサルはガリア遠征に成功したことによって、ポンペイウスに劣らぬ戦功と自前の地盤を得たことになる。ローマの覇権を受け入れたガリア人はカエサルの「子分」(=クリエンテス)となったし、ガリアの通商利権を握ったことでカエサル自身の政治資金は潤った。もうクラックスに頼ることはない
いよいよ次巻でカエサルの元老院との対決、国政改革が始まる

文庫本の中巻と下巻は、『ガリア戦記』の引用が多い。読み比べてみるのもいいのかも

ガリア戦記 (岩波文庫)ガリア戦記 (岩波文庫)
(1964/01)
カエサル

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次巻 『ローマ人の物語 11~13 ユリウス・カエサル ルビコン以後』
前巻 『ローマ人の物語 6~7 勝者の混迷』
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