『サンデルの政治哲学』 小林正弥

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サンデルの政治哲学-<正義>とは何か (平凡社新書)サンデルの政治哲学-<正義>とは何か (平凡社新書)
(2010/12/11)
小林 正弥

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マイケル・サンデルと交流のある著者が、彼の政治哲学をその著書を通じて解説する新書
教育テレビで流された「ハーバード白熱教室」から始まるサンデルブームの分析から始まって、『これから正義の話をしよう』『リベラリズムと正義の限界』『民主政の不満』『完全な人間を目指さなくてもよい理由』『公共哲学』といった諸著作から、その時々の情勢を踏まえた上で、詳しく紹介していく
それぞれの章が、本の解説そのままと言っていい。ここまで細かく真意を汲み取ってくれたのならば、サンデル自身が推薦するのは当然のことだろう
この本で浮かび上がってくる、サンデルのイメージは、一本気な共同体主義者(コミュタリアン)。論戦の相手や状況によって言いまわしは変えるものの、スタンスはずっと一貫している。リベラリズムを代表していたジョン・ロールズの変遷とは対照的に映る
サンデルべったりの本ではあるものの、これ一冊で、彼の著作をみんな読んだ気になること受けあいだ

サンデルの話を理解する上でまず抑えないといけないのは、「正義」と「善」が違う観念で扱われていること
「正義(justice)」とは儒教における「義」とは違い、「公正」というニュアンスであり、政治の世界では「法の下の平等、公正」という意味になる
アメリカで主流の位置にあったリベラリズム(米国では自由を前提とした上で平等を重視する考え方)では、「善」というのは個々人の宗教、信条によって異なってしまうので、この概念を棚上げし法による「正義」で様々な問題に答えを出そうとしてきた
その結果生まれたのが、弁護士が闊歩する訴訟社会、手続き共和国だったのだ
そこで、サンデルはこうした「善」を棚上げする態度では、解決できない問題が数多くあることを指摘していく
例えば、「新しく生まれた世代は昔の世代が行なった不正に対する責任を負うべきか」という問題
リベラリズムでの“個人”は、自由で独立した存在であり、自分のしたことだけに責任を負う。だから、世代を越えた連帯責任はないという結論になる
しかし、実際の政治でそれが通用した試しはない。そこにはリベラリズムの「負荷なき自己」ではなく、世代を越えた「コミュニティ」の意識と「責務」の感覚が必要になってくるのでは、とサンデルは問いかける

共同体主義というと、すわ戦前への回帰だ、ナチに近い、と反応されてしまうが、サンデルは国家主義に陥らない処方箋として、「国家」を保ちつつも主権を上下に分散することを提案する
上は国連に代表される国際組織、EUなどの地域共同体、下は日本でいうと中央にたいする道州制などの地方分権、NGO等を通じたコミュニティーなどがこれに当たる
もっとも、サンデルが論じている基盤は当然アメリカ社会であるので、そのまま日本に適応するわけにはいかない
著者である小林正弥は、「公共哲学」という立場から日本で共同体主義をやろうという人のようで、鳩首相の「友愛」にも期待していたという
共産主義が崩れ、市場原理主義という嵐が去った今、次の時代を見据える上で共同体という視点は重要で、今回の震災を通して新しい形が見えてくるのかもしれない


ネットで軽くマイケル・サンデルのこと触ってみたが、出自のことが余り出てこない
本書では、サンデルの哲学の背景として、ユダヤ教の影響が指摘されている。共同体主義を語れば、やはりある種の宗教意識とは切っても切れない
サンデルがユダヤ系か、どうかは何とも言えないが、亡命ユダヤ人であるアーレントの影響があるのは間違いなくて、彼女もまた“活動(action)”という概念から公共哲学の再興を意図した
ちなみに経営学の祖ドラッカーも亡命ユダヤ人で、経営の中に公共性を重視した
アーレント-ドラッカー-サンデルの三者が、同時期に再評価されたことは、ただの偶然じゃない
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