『桜田門外ノ変』 上巻 吉村昭

今月もしばらくは幕末モードで

桜田門外ノ変〈上〉 (新潮文庫)桜田門外ノ変〈上〉 (新潮文庫)
(1995/03)
吉村 昭

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幕末の転機となった桜田門外の変の顛末を、水戸藩士・関鉄之介らの視点から描く歴史小説
上巻では、変の前提となる、水戸藩の藩政改革水戸藩主・斉昭と幕府との確執対外政策を巡る朝廷と幕府の主導権争い、そして井伊直弼による苛烈な弾圧“安政の大獄”が描かれる
驚くべきは、実は桜田門外の変までの過程の中に、維新回天の構想がすでに表れていたことだ
幕府の独断的な開国を覆すべく、朝廷を中心とした雄藩連合で新しい政権を作る・・・。その当事者として、長州の吉田松陰、薩摩の西郷吉之助(西郷隆盛)が動いていた
長州を代表する人材となる桂小五郎は松蔭の高弟である。思えば、薩長同盟もいつか来た道だったのだ

この作品を読むと、幕末の対立を攘夷vs開国で短絡的に捉えてはいけないことが、良く分かる
これは路線の対立もさることながら、権力の所在を巡る争いなのだ
水戸藩と幕府の対立の契機となったのは、日米通商条約を朝廷の許可を得ずに締結したことだ。これにしても、条約の内容よりも、朝廷を無視したことの方が重要に思える
仮にあっさりと朝廷が勅許を出してしまえば、水戸藩も志士たちも騒ぐきっかけを失っていただろう
逆に井伊直弼が勅許を得なかったのは、アメリカの要求に速やかに応えることもさることながら、対外政策は幕府の専権事項であるという表明でもある
安政の大獄という恐怖政治は、天下の大権はすべて幕府が握るという佐幕原理主義の表れと見れないだろうか
しかし、安政の大獄の有り様は異常だ・・・

いちおう、水戸藩士たち、その一員である関鉄之介が主人公的存在なのだが、かなり没個性的に描かれる。鉄之介は痔で困っている人という印象しか残らない(笑)。『竜馬がゆく』を読んだ後だと、なおのこと地味に映る
しかし、これが吉村作品の手法で、週刊誌の記事のように事実関係を並べ、そこに地味な登場人物に地味なワンシーンを放り込むことであたかも事実のように見せてしまうのだ
こういう手法は人の目を引かないのだが、一度作品世界に入りこむと抜け出せない魔力がある。書かれたことの虚実が分からず、自明のことのように受け取らざるえなくなる
その一方で、小説家として魅せる場面も。上巻のラストで、鉄之介の弟が年賀の挨拶から帰るところ、「雪になった」と云わせる場面は後の展開を知っているだけにしんみり来た

次巻 『桜田門外ノ変』 下巻
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