『金融工学とは何か』 刈屋武昭

先月はまた一桁の更新に終わってしまった。中旬に風邪を引いてしまったのが痛い

金融工学とは何か―「リスク」から考える (岩波新書)金融工学とは何か―「リスク」から考える (岩波新書)
(2000/05/19)
刈屋 武昭

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資本の有効活用を目指す金融工学について、基礎と理論、各種の金融商品の性質を細かく触れた新書
本書が出版された2000年は、日本で金融自由化が進行中で、新自由主義路線の小泉政権が誕生する前年。著者は金融の自由化、グローバル化を推進するべく、自ら金融工学の学会(ジャフィー)まで立ち上げた人だ
本書は新書しては生真面目な仕様で、次々とカタカナの専門用語が登場する。普通のビジネスマン向けというより、業界人・学生向けなのか
一度この手の業界に関わったことがあったから読み進められたものの、数式などにはクラクラしてしまった
旗幟を鮮明している人の割には、記述にそれほど偏りは見られないし、論調はバラ色の未来というより、日本の現状(ゼロ年代)を踏まえた冷静なものそれぞれの金融商品についてのリスクをちゃんと書いている
金融の入門書にしては少々堅いが、誠実な新書だとは思う

あれだけ世界を席巻したファンド・マネーの裏には、どんな思想があったのか。本書を手に取ったのは、自由化を推進した側からその本音を聞きたかったからなのだ

高度に蓄積された資本はみずからの価値増殖の基本的要求(資本の論理)に基づいて世界の経済をグローバル化し、コストとリスク、リターン(収益性)のさらなる効率化を要求し続けるように宿命付けられている。その宿命を与えているのは、いい意味でも悪い意味でも人間の進歩、富、権力、名誉等への限りない欲望であろう。この欲望に支えられた資本の要求は、より豊かな経済社会を作るための原動力でもある。(p9)

宿命という強い言葉に驚くが、一種の成長神話のように思えた。それほど人間が「限りない欲望」を持つのだろうか
現状のシステムだと成長しないと困るので、「欲望に限りがあると困る」という風にも聞こえる
なるほど、激しい経済変動の中で資産を保全するには金融工学が必要というのは分かっても、その変動を生み出す一端が金融工学なわけでどうにも釈然としない
基本理論である「無裁定価格理論」自体は、「市場はリスクなしにリターンはないように調整する」というまともな物だ
しかし、金融工学が生み出した商品は、そうしたリスクを隠蔽してタダ儲けを演出しているかのよう
売掛金を証券化して資金調達するとか、地震リスクを債権化するとか、住宅ローンを証券化するとか、膨らんでいく風船を渡し合いするような狡さがある
そういう狡知が生まれたのも、金融そのものが富を生み出していくという錯覚に始まっていると思う

金融の自由化には充分、意味があったはずだ
不確かな新規産業に従来の金融機関が踏み込めないのなら、違うルートを用意する必要がある。アメリカではそうして多くのベンチャーを立ち上げ、グーグルもフェイスブックも生まれた
しかし、金融は経済の潤滑油であっても、エンジンそのものじゃない
金を回すスピードを速くしても、社会は豊かにならないのだ


せっかくのエイプリル・フールなのに、生真面目に書いちまった
余裕がないと冗談もでないなあ
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