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『竜馬がゆく』 第1巻 司馬遼太郎

こっちは職場で読んでいた

竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)
(1998/09/10)
司馬 遼太郎

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坂本竜馬を世に知らしめた司馬遼太郎の代表作。第1巻は土佐から江戸へ剣術修行に出るところから、黒船来航を経て桂小五郎と対戦した安政の諸流試合まで
蘊蓄が多くなる後年の小説とは違い、題名のとおり文章は軽快歴史小説なのに、夏目漱石の『坊っちゃん』のような感覚で読み進めてしまう
司馬小説は個人の力を過大評価しがちと批判されることもあるが、この小説の第1巻に関してはそれほど感じない
竜馬はたしかに個性的なスターとして扱われるが、圧倒的ではない
なぜならば、他の登場人物がそれとタメを張るぐらいに個性的で存在感があるからだ
引き立て役の武市半平太岡田以蔵を除いても、竜馬の姉乙女、泥棒の藤兵衛、“ストーカー”左馬之助などなかなか味のある脇役が揃っている
こういう個性がたくさんいる社会に、竜馬が紛れ込んでいる印象を持つので、その活躍にも納得してしまうのだ

入信者レベルの司馬信者は、あれだけ資料を当たった司馬が言っていることだから作中に書かれたことは“事実”だと盲信する傾向がある
うちの一家でも司馬信仰(!)がさかんで、一時期は「司馬がこう言ってた」と言えば歴史談義に決着がついたものだ
で、次の段階では小説と史実が違うことに気付き、裏切られた気になって少し距離をとるようになる。「司馬さんは合理主義が好きな近代主義者だよね」と相対化する
そして、最終段階。作中に現実にない史料をあるかのように書く(素人には判別不能だ!)、作家としての創造力、執念に驚愕する。小説家としての司馬を再発見するのだ
今回の再読ツアーは、この最終段階が狙いである
しかし、こいつはどうなのだろう

 土佐安芸郡に、井ノ口村という村がある。
 村は高知の町から海岸伝いに十里ばかり室戸岬の方角へ行った安芸川の中流になり、景色のいい所だが、人の気象はおそろしくあらい。
 この村では寄るとさわるとすぐ暴力沙汰におよぶ。

 ・・・(略)・・・
 井ノ口村の男は胆力があり、どの男も人の虚をつく謀略の才があり、そのうえこの村の衆の悪口雑言のすさまじさときたら、
「井ノ口に罵られれば魔物も逃げる」
 と国中でおそれられているほどであった。
(p351)

岩崎弥太郎の出身地なのだが、こういう評判が本当にあったのだろうか。というか、こういうことを書いて村からクレームは来なかったのだろうか(笑)
本人は取材旅行に出かけたに違いないので、旅先で元ネタとなるエピソードでもあったのだろうか。考えるほど、謎は深まるばかりである
実家の『街道をゆく』でも、あたってみようかしらん

女性の存在が目立つのも、第1巻の特徴だ
家老の娘お田鶴様、師範の妹さな子、竜馬を誘惑するお冴、と竜馬はラブコメのようにもてもてである
脱童貞の相手、お徳との絡みも面白い。成功する夜這いって楽しそうだなあ
そういう一方で、引き立て役に武市半平太、ライバルとして桂小五郎、敵役の左馬之助が配されて、要所で活劇がある。エンタメとしても抜かりがないのだ
いつまでもこういうノリでいかないだろうけど、この青春の疾走感が素晴らしい


次巻 『竜馬がゆく』 第2巻

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