『リーンの翼』(新) 第1巻 富野由悠季

今月は一桁台の更新になりそうだ
ノベルズ三冊分の単行本を読めば、こうもなろうか

リーンの翼 1リーンの翼 1
(2010/03/20)
富野 由悠季

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1945年。沖縄で撃墜された特攻隊員、迫水真次郎は、不思議な力で異世界バイストン・ウェルに放り込まれた。そこは妖精、悪鬼が闊歩する世界だった。恩人であるアマルガン・ルドルの手伝いをするうちに、運命の女性リンレイと出会い“リーンの翼”を持つ聖戦士として覚醒していく・・・二十数年の刻を経てリライトされた新版『リーンの翼』

いや、見た目以上の文量だった
最近の本は、読者に読みやすくかつ冊数を稼ぐように、字を大きくしたものが多いのだが、本書はまるでノベルズを再現したかのように、一ページ二段構成なのである
行数が正味二倍となるので、細かい台詞の多いページでも余白が少なく文字で埋まっているのだ
いまどき、日本の小説でここまで文字数を誇示する作品が何本あるだろうか
昨今の商業展開と逆行しそうな形式も、文学全集を思わせる重厚さがあって、いろんな意味で鼻血が出そうになった

1巻目は、ノベルズ4巻目の半ばまでで、ストーリー展開はほぼ旧版と同じだ
最初の方は旧版と見比べてみたのだが、元の持ち味を残しつつも一から書き直されている。ノベルズから文庫での表現の書き換えに留まらず、文字どおりのリライトとなっているのだ
細かいところでは、キャプランが迫水の修行に嫌みを言うシーンが割愛されてたり、序盤の迫水の、アマルガンへの口にきき方が丁寧語になっていた
特に変わったな、感じたのは、第二次大戦までに到る日本論だ。旧版は日本の近代化の歩みを自滅的戦争という結果から罵り嘆く調子だった
本書では、戦国、江戸時代からの日本の技術・文化的背景を振り返りながら、近代日本の有り様を冷静に語っている
これは富野監督の熟練、変化であるともに、時代が変わったこともあると思う。昔は司馬遼太郎すら、ノモンハンに触れなかったのだ
しかし、戦前の日本に甘くなったわけではない

 戦前“天皇機関説”を説いた美濃部達吉を弾圧して開戦を決定して、不毛な作戦を維持し続けた強硬派たちは、天皇の統帥権をも自分たちのものにした。
 外道な法の拡大解釈である。
・・・(略)・・・結局、最高決定権をわたさなかった天皇を引きずり出して敗戦を宣言させ、戦争の種をまいた当事者たちは天皇の背後遠くにかくれて、姿さえみせなかったのだ。
 そのような者どもこそ、コモン界の言葉では、ガロウ・ランに憑依されていた者たちという。(p189)

むしろ、矛先が研ぎ澄まされたと言っていい
他にも書き足された部分には、迫水の家族の話が詳しかったり、特攻機に乗せた文金高島田の人形が描写されてたりして、アニメで先を知っているとニヤリとする場面もある
殺伐とした世界観と残虐描写は健在も、作品全体としては穏やかな丸味を感じた。新訳Zほど顕著には現れていないが、それが一番の変化なのかもしれない

そして、何よりも読みやすい!
重箱の隅をつつけば、文法的におかしいところもあって「やっぱり富野監督だ」と不届きに喜んでしまう箇所もあるのだが、重複したり多弁と思われた箇所が削られたり書き直されているので、余り引っ掛からずに読めてしまった
信者ゆえにこちらが慣れてしまった可能性もあるにしても(笑)、小説家としても監督が前に進んでいるのを確認できたのは嬉しい
ストーリーはノベルズ4巻目にすでに達している。リンレイとの物語が2巻目までなら、ノベルズ5・6巻でいかなる変化があるというのだろう。今から楽しみである

次巻 『リーンの翼』(新) 第2巻

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