『黒の碑』 ロバート・E・ハワード

法事の待ち時間にクトゥルーを読む俺って・・・


黒の碑(いしぶみ)―クトゥルー神話譚 (創元推理文庫)黒の碑(いしぶみ)―クトゥルー神話譚 (創元推理文庫)
(1991/12)
ロバート・E. ハワード

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ファンタジー世界における代表的な戦士“コナン”を生み出したロバート・E・ハワードによるクトゥルー神話短編集
ヒロイックファンタジーの書き手ゆえか、人間側が反撃に成功するケースが多いが、それまでの過程では読者の心肝を寒からしめる“ホラーがちゃんと用意されている
主人公に英雄をさせながら、クトゥルー眷属の威厳(!)を保たせたバランスは、さすがは伝説のファンタジー作家だ
感想は追記に回ってしまったが、特に『大地の妖蛆』『鳩は地獄から来る』は傑作である

「序(はしがき)」
クトゥルー作家の一人、デイヴィッド・ドレイクによる短編集の序文
ハワードの作品世界の紹介にもなっていて、彼を理解する端緒には絶好だ
なかなかの名文なので、飛ばさず読むべし

「黒の碑」
旅先の怪異にびっくり驚くというクトゥルー神話の王道パターン
クトゥルー作品の処女作だけあって、習作の観あり
この設定が気に入ったのか、他の作品にも「黒の碑」が重要なアイテムとして登場する

「アッシュールバニパル王の火の石」
イギリス人とアラブ人のコンビが禁忌の秘宝を追う探検行
意気のあった二人の掛け合いが面白く、破滅的な探検の中にもユーモアが溢れている
死にそうで死なないのも、また良し

「屋上の怪物」
旅から帰った友人が巻き込まれるという王道パターン
ひねりはないが、怖さはある

「われ埋葬にあたわず」
友人とともにある老人の遺言を実行しようとするが・・・
奇怪な老人の経歴に相応しく、その死体の周りで人知れず不思議な“葬式”が始まっていく
気がつかないうちに型に嵌められて、抜けられなくなる主人公たちがカワイソス

「妖蛆の谷」
ノルマン人の英雄ニオルドが語る、ブリトン(?)の地における怪異譚
代々のアーリア人に転生するという価値観やブリトンの原住民ピクト人への優越に、偏狭な民族主義めいたものを感じるが、それをファンタジー世界で昇華させているのが作者の持ち味か
妖蛆といっても、でかすぎて蛆とは想像できない(笑)
原語では「worm」だったのだろうか

「獣の影」
恋人に迫りその弟に重傷を負わせた悪漢を追って、誰もが避ける古屋敷に入ったが・・・
正面からはまったく敵わないので、主人公がいつ死ぬかとハラハラする
クトゥルーだとやられるのがデフォだから尚のこと

「老ガーフィールドの心臓」
親友ととも不思議な老人の死に立ち会う
老人が死ぬまでに紆余曲折があって、不意を突かれた
死んだ後の描写とオチで一気に怖くなる


「闇の種族」
恋人をライバルから連れ戻すべくリチャード・ブレントは、怪しげな洞窟に入る。そこで彼は前世の自分を追体験するが・・・
ネタバレになるから書かないが、ちょっとしたファンサービスな短編
前世の夢の最後と、現実での最後が上手い具合にリンクしていて、ピッタリとオチが決まっている

「大地の妖蛆」
ピクト人の王によるローマ総督への復讐譚
解説にもある通り、作者にとっての古代はフランチャイズ。すべての登場人物が生き生きとしている
人間たちの愛憎、胆力が、強大な怪異にひけをとらず、ピクト人の王ブラン・マク・モーンの傾きぶりがいい
ハワード是にあり、という名編だ

*英語の「worm」って、細い虫という意味だけど、蛇も範囲に入ったはず。これに関して「妖蛆」は誤訳!

「鳩は地獄から来る」
グリスウェルは友人と古屋敷で休んだ。そこで謎の笛が聞こえる。誘われるように階段を上がる友人。降りてきた彼は、自らの額を割った斧でグリスウェルを襲うとしていた!
非常にスリリングな中編だ
敵本体は強くないものの、その特殊能力が強力で真綿で首を絞めるように主人公たちを苦しめていく
発見された手記や奇怪な老人によって語られる真相も、過去のクトゥルー作品の風味をうまく踏襲していて、いい雰囲気を醸している。普通なら「またかよ!」と苦笑いを覚える小道具が、使い方のタイミングで恐怖を増幅させているのだ
これは作者のモノが違うという他ない
すべての要素が噛み合った上に、最後のオチがたまらない。たった一行で真犯人をすり替えてしまうのだから・・・
スティーヴン・キング「今世紀屈指の傑作恐怖小説」と褒め称えたというのも、当然だろう

最初、途中、最後に三編の詩があるが、これは原文で読んでみないとなんとも言えない
(英文が門外漢の僕には読んでも風味は分からないだろうが)
解説もかなり力が入っているので、ハワードや作品を理解する上で助けとなる。最後まで読んでみよう
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