『愛と幻想のファシズム』 下巻 村上龍

年越し前にテンプレを変えてみた
柄にもなく渋い背景だが、図書館ぽく見えなくもないかと(苦笑)

愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)
(1990/08/03)
村上 龍

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冬二の喝で復帰したゼロは、狩猟社の“ゲッペルス”として宣伝部長に就任。スキャンダル雑誌を買い取って、既存の政治勢力を搦め手から攻撃し始めた。警察、官僚、自衛隊にシンパを作ることに成功した狩猟社は、いよいよ政権奪取に向けた計画をスタートさせる。それを察知した世界企業連合“ザ・セブン”は、アメリカ、ソ連両大国の力を使って阻止せんとする。全世界を舞台にした政治闘争の行方は?

やはり、ポリティカル・フィクションとしては上手くいかなかった
作者にとっては、その裏の物語であるトウジ、ゼロ、フルーツの三角関係こそ本筋だったのだろうか
世界中から出てくる膨大な固有名詞は、取材量に裏打ちされたものではあるが、残念ながら話のリアリティを支え切れていない
本来そうした要素の背後に働いている政治力学が、ちゃんと計算されていないからだ
活動家レベルの世界ならともかく、日本はおろか全世界を視野に入れた国際政治小説など、適性の埒外だったのだろう
登場人物そのものは上巻から変わらず面白い。下巻からは、“ザ・セブン”の総帥ジェローム・ウィッツに、左翼政権の万田首相と敵役も揃ってくる
しかし、要所で作家の欲望が剥き出しの展開が目立った
最後はなんちゃってハッカーのサイバーテロ無双で一方的にケリをつけるとか、もう講談の域でありまして・・・

出版された時期から考えて、『沈黙の艦隊』を意識しているはずだ
社会に発信される演説、国会に立て籠もる自衛隊を説得する振舞い、直後の銃撃、政権交代、核を使った駆け引き、世界の代表を集めたコンサート・・・と、被る要素が多い
何よりも、キャラが一切ぶれない主人公のカリスマ性は共通するところだ
とはいうものの、世界に新しい秩序を作ろうとする海江田に対し、冬二は・・・

「ところで、ギリシャ悲劇というのは、どういう意味なんだ?」
 車は中央高速に入り、すっかり暗くなった中に、八王子の夜景が見えてきた。規則的に道路を照らす青白い街灯と、眼下の、細かく点滅し、震える町の灯り。
 見ろよ、俺はそう言って車の外を示した。母なる日本だ、オレは、母を犯して、父を殺すんだよ・・・。(p409)

この小説の数少ない見せ場で、冬二の本音が吐露されるシーンだ
父とは、直接にはこのシーンの前に会った万田のことであり、間接的には日本を嫌う日本人自身であると匂わせている
冬二は、上を一斉に入れ替えるような、破壊的な世代交代がやりたいのだ
しかし、オイディプスは向こうの神話だ。これが成立することは、日本が日本でなくなることを意味しないのか
冬二本人の問題と日本の抱えている問題をごっちゃにしていることが、作品をまずくしてしまっていると思う

いっそのこと、架空戦記とまで吹っ切れた書き方をしていたら、もう少し笑えたかもしれない
部分的にはディストピア小説として楽しめるし、狩猟社の悪行振りは立派なピカレスクロマンである
ブラック・ユーモアに徹しきれないのは、文体が「俺」で始まる一人称の語りであるように、作者が主人公にのめり込みすぎるからだろう
あとがきでは、どれだけこの小説ために取材したか触れられている。冬二のキャラクターを作るために、2週間ハンターと生活したらしい
『あの金で何が買えたか』という作品があったが、「この取材量で何が書けたか」と問いかけたくなる、勿体ない小説だった


アメリカナイズされたハンターが日本で政治をやるには、日本的、あるいは東洋的なカリスマを身につける必要があると見ていた
もし、できなくば支持を得られず、破滅あるのみ。そのときはそのときで、本能寺ぶりを楽しめようと
それがそのまんま、まかり通ってしまうんだよなあ・・・
あ~あ、勿体ない

トウジ、ゼロ、フルーツの三角関係は、『コインロッカーズ・ベイビー』から引きずっているテーマらしいので、読んでみたいとは思う
本書でもこの三角関係の部分については、読み甲斐があったんだ

前巻 『愛と幻想のファシズム』上巻
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