『ロンドン塔』 出口保夫

イギリスネタが続きます

ロンドン塔―光と影の九百年 (中公新書)ロンドン塔―光と影の九百年 (中公新書)
(1993/07)
出口 保夫

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漱石の『倫敦塔』などから日本でも知名度の高いロンドン塔。古代ローマの砦時代から、王宮として機能した中世、監獄として悪名高い近世、そして観光名所となった現代までをイギリスの歴史とともに振り返る新書

とにかく、各時代が丁寧に取り上げられている。ロンドン塔は長い間、政治の中枢であったので、塔を通したイギリス(イングランド)の通史と言っていいぐらいにまとまっている
その一方で、序章に現在のロンドン塔の構造や展示物を紹介し、最後に夏目漱石にとっての「倫敦塔」を解釈すると、比較的薄めの文量なのに痒いところにまで手が届いている
英国好きの歴史オタには至れり尽くせり新書なのだ

ロンドン塔の中核ともいえる「ホワイト・タワー」は、ノルマン朝の創始者ウィリアム征服王によって建てられた
指揮したのはフランスのルーアン出身の司祭ガンドルフで、ホワイト・タワーの天守閣はまず内部に作る礼拝堂を中心に考案された。正方形の天守閣は正確に東西南北を向いているが、それは古来より礼拝堂を西向きに建てねばならなかったからだ
中世の王城のなかで、最も神聖な場所は王室専門の礼拝堂であって、まずこれをどこに置くかが建築家の重大事であったらしい。即位の儀式などで王の神性を保つためにも、外せないところなのだ
と、王城としての機能を持ちつつも、必要性や王の発案(趣味!)から建て増しされていくのがロンドン塔の特徴
プランタジネット朝ヘンリー三世は、初めてのイギリス生まれの英国王として大規模な改築を始める
ホワイト・タワーの周囲に小さな塔を建てて防衛力を高めつつ、新塔(!)ウェイクフィールド・タワーでは豪華な私室を置き新しい王宮として使用した
また、珍しい動物を集めた「ライオン・タワー」を建設。北極熊、象、豹などがいて、市民にも見学が許されていた。世界初めての動物園であり、18世紀までロンドン市によって運営されていたというのも驚きだ

ロンドン塔というと、監獄としての歴史を忘れることはできない。多方面から塔を紹介しつつも、最も熱がこもっているのは、塔に関わった人々の生き様、死に様
薔薇戦争中のヨーク家の内紛に消えた二人の王子、絶対君主ヘンリー8世に尽くしつつも疎まれた聖トマス・モア、チューダー朝の跡目争いに巻き込まれた悲運の女王ジェーン・グレー・・・
なんといっても、ヘンリー8世の処刑無双ぶりが目立つ目立つ。まったくもってトンデモナイおっさんである
中世は親戚である王族を生かしておくケースも多かったはず(?)。この人がタブーを破ったことで、その後の多くの流血事件につながりチューダー朝の断絶に到ったのではないだろうか
タブー破りが王族の神性を打ち砕き、近代を用意したという言い方はできるかもしれないが
著者は最近になって、こんな本も出していた

図説 ロンドン塔と英国王室の九百年図説 ロンドン塔と英国王室の九百年
(2009/01)
出口 保夫

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すっ、すごく分厚そうです・・・
著者はどんだけロンドン好きなのだろう
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