『五輪の薔薇』 V チャールズ・パリサー

ついに完結

五輪の薔薇〈5〉 (ハヤカワ文庫NV)五輪の薔薇〈5〉 (ハヤカワ文庫NV)
(2003/07)
チャールズ パリサー

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モンペッソン家からついに遺言書を入手したジョン。ロンドンを彷徨いながら“学校”から逃亡したときに助けてくれたヘンリー・ベリンガーを頼ることにする。大法廷に遺言書を提出するべきだと言うヘンリーに従い、夜道に出たジョンだったが、クロウジャー家の者に襲われるのであった。果たして、誰が味方で誰が敵なのか・・・。五世代に渡る五つの家系織りなす謎が今、解き明かされる!

最終巻には、今までの溜まり溜まった伏線が爆発するように、二転三転する展開となった
首謀者の設定も意表を突いたものだ。なにせ、遺言書を巡る五つの家系に絞って考えてしまうから、とてもじゃないが気がつかない
いや、胡散臭いとは思っていたものの、ここまでの悪役に膨らむとは思いも寄らなかった。彼がディヴィッド・モンペッソンの友人ハリーだったとは・・・
主人公の危機が陥る局面で多少のご都合はある(どうしてあの時、サイラスはわざわざナイフを残していくのか?)のだが、ジョンの機転も絡んでいるので余り気にならない(あのピンチを脱出させるために第4巻でその予行練習までさせているのだから、作者のアイデアに唸らざる得まい!)
3巻までに悪と不幸に振れていた振り子が、大団円に差し掛かって逆に振れたように感じるのだ。フォースティンクス夫人が見せた最後の慈悲は、悪の重みに耐えきれず自壊したかのよう
当時の社会の持っていたシビアさと小説的なお遊びの狭間を綱渡りするようなミステリーだったが、最後は人生の哀歓までも感じさせてくれた。このシリーズは傑作だ!

この小説は最初、無垢な少年の冒険小説として始まった
少年を視点として19世紀イギリス、ロンドンを巡るミステリーツアーといった風情だったが、いつからか少年は自我を養い、悲惨な境遇を打開するため積極的にアクションをとるようになっていった
一つ目の転機は母親の死とバーニィら悪党との出会い(第3巻)であり、二つ目は遺言書とヘンリエッタを巡る苦悩(第4巻後半)だ。母親の死で荘園相続の意志を固めた彼だったが、ヘンリエッタにその正義への疑問を突きつめられ、荘園を奪い返した際の影響の大きさを考えさせられることになる
絶対的に思われた正義も、主観的、相対的なものに過ぎない。自らの正義のために、すでにジョーイの父親の命まで奪ってしまった・・・もうこの時点で彼は、大人の世界に脚を踏み込んでいた
そして、第五巻の溺死の危機に際して、自分の起こした過ちを厳しく認め懺悔する。そして自分の中にある欲望が、実は「敵」のそれと同質のものであったことを知るのだ
ミステリーとしてのテンションを保ちながら、深い文学的内省を両立させているのが凄い
ディケンズのパロディ集にとどまらず現代の文学の成果をブレンドさせて、新しい時代小説として成立させているのだ。ディケンズを超えたという評価があるのも、なるほどである

さあ、大変だ。最終巻を読み切ったが、肝心の謎は残されたままなのだ
作者からすると、材料をこれだけ見せたのだから、自分で考えてくれということなのか
前巻の記事で註は読むべからずと書いてしまったが、ここまで来たら読み直した方が良さそうだ
4巻のリディアの話から、ジョンの父親は彼だと分かるとしても、エスクリード(ハッファム家の秘書)を祖父と呼ぶのはどういうことか
納得できる答えを見つけるためにまた読まざる得ないわけで、否応なくかぶりつかざる得ない
(あるいは、ミステリーの体裁をとりつつも、一人の人間がすべての謎を知ることはできないということを作者は示したいから、情報を欠落させているのかもしれない・・・)
それにしても、物語の構成が心憎い。昔の事件と今起こった事件がまるで運命のごとく人を入れ替えて繰り返される
ある部分で宿命劇を否定しながら、バランスをとるように反対側では運命の不思議を示す
ヘンリエッタが最後ああなってしまうのは、リディアやジョンの母メアリーと被らせているのだよなあ
何から何までは上手く行かないし、今日までのことが片付いたらもう明日のことに忙殺される。必至に駆けずり回っても、どこかで手をすり抜けて消えてしまう。そんな現実の無残さを見せつけられるラストなのだ
ああ、無情・・・

前巻 『五輪の薔薇』Ⅳ
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