『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一

30万部も売れたんだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
(2007/05/18)
福岡 伸一

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気鋭の分子生物学者が先達や自身の研究を辿りながら、「生命とは何か」を問い続ける新書
本書の特徴は、専門知識を語るまえに必ず、その内容を比喩する文章や私小説的な語りで読者へのヒキにしていること。著者も編集者も専門の話は読者を眠たくすると重々承知していて、軟らかい文章で読む気を保つことを狙っているのだ
しかし、これが上手く言っているかという必ずしもそうではない。喩え話に無理がある箇所もあるし、著者がいきなり自分を出してくるので、各所で面食らいがちだ
特に専門の方でこちらが乗り気になったところで、著者の話をされてもはぐらかされたように感じるだけ
おそらく編集者の助言でこういうことをやったに違いないが、明らかにやり過ぎだ。著者は人文の素養はあっても本性は理系の人なのだろう
構成も先人の話から「生命とは何か」という主題を引き出しつつ、後半に自分の研究の話になってしまうので、全体的にはまとまっていない
それでも話のひとつひとつは質が高い。質が高いゆえに秩序を欠いているほどだ
著者の情熱はガチなのに本としては上手くいっていないという、努力賞な新書といえる

最初の章の始まりがこれだ

 摩天楼が林立するマンハッタンは、ニューヨーク市のひとつの区(ボロー)であり、それ自体ひとつの島でもある。西をハドソンリバーが、東をイーストリバーが流れる。
 観光船サークルラインは、マンハッタンが縦に細長い、しかし極度に稠密的な島であることを実感できる格好の乗り物だ。船は、ハドソンリバー岸を出発点とし南下、自由の女神を眺望しつつ、かつて世界貿易センタービルが聳え立っていたマンハッタン南端を回って、イーストリバーに入りこれを北に遡行する。
(p13)

以下、延々とニューヨークの風景描写が続く。まるで旅行代理店が書いた紀行文のごとし(笑)
序盤はこういった凝った文章のヒキが、読者へのいい奇襲になっているのだが、後半になると読者にも耐性がつくので邪魔になってしまう
その結果、この本で何がしたいのか見えにくくなっていく。「生命とは何か」という哲学がしたいのか、科学者たちの実像を語りたいのか、自身の研究、身の上を語りたいのか、テーマがぼけてしまうのだ
一つ一つのネタはちゃんとしているので、何かテーマを追いかけたというより小ネタ集として捉えた方がいい

著者が「生命とは何か」の答えとしているのが、「動的平衡」という言葉(文章が軟らかいのにここだけ固い言葉遣い!)
その意は、分子レベルでは流動的に見えても、実は秩序(バランス=平衡)があってそれを保つために変わっていく。それが生物であるということだ
これはわりあい、普通の人間が持っている認識だと思う
例えば禁煙したい人が医者に相談したときに、体の細胞が入れ替わるのに数年かかるという話を聞いたことはないだろうか(自分は元から吸わない人間だが、親父から聞いた)。禁煙に成功した人間からこういう話をよく聞くのだ
帯の評者は、やれ反逆だ、異議申し立てだと、書き立てているが、全くニュアンスが分からなかった
ちなみに評者の面子はよしもとばなな、最相葉月、茂木健一郎、内田樹。こういうところを抑えるのがベストセラーのコツなのだろう
著者は他にも本を出し続けている。構成はともかく文章は分かりやすいので、もっと肩の力を抜いた本なら読んでみたい
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